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「幸村ぁ、明日買い物行かなーい?」


明日は土曜日。ふだんは、毎日仕事でコキ使われてるから土曜日は昼過ぎまで寝るからおこさないで起こしたら絶交。とか言って外出したがらないのだけど、珍しく佐助からお誘い。
なんだか佐助と出かけるのは久々な気がして、その言葉だけで胸がおどる。

爪を綺麗な形にヤスリかけながら、佐助が何処行こうかねえと呟いた。
何処行こう!政宗様とふたりで見つけた穴場の服屋さん、雑貨屋さん、佐助とも行きたいところがたくさんあるよ。


「午前の電車乗るよ。寝坊ダメ、ゼッタイ。というわけで寝よう!」

「え、まだ8時半!」


ていうか毎日9時から政宗様とお電話タイムだからわたしはまだまだ寝れないの!


「また政宗と電話?どーせ日曜日会うんだし、いいじゃない」

「うー」


毎週日曜日は政宗様と会う約束。
でもねでもね、ごろごろしながらどーでもいい会話(政宗様とする話しは何でも大事だけどね)するのがしあわせなのだ。会いたくなるあの感じが好きなの。

って力説したら、佐助がうぜーうぜーって爪をやすって出た粉吹き掛けてきた。
やめてくれないか。それ掃除すんのわたしなんだからねっ(絶対わかっててやってる)


「幸村のばか!もうあたし寝る」


そう言って寝室(共同)に向かう背中を見送った。
8時半に寝るなんてよっぽどお疲れみたいだ。だって今日、佐助の好きな番組の最終回なのに。とおのりが終わっちゃうなんて思わなかった。いつもわたしは見ないけど。
ビデオセットしてあげよう、と思ったらもう録画予約してあった。佐助めっ抜目がない。


今夜も政宗様と電話切るのが惜しくて、またちょっとまだちょっとってずいぶん長電話。
幸村、大好き。おやすみ。
だって。わたしも、、…おやすみなさい。



で、翌朝。


「やだ!間に合わないじゃない、ちょっと幸村、あたしのシャドーが無い!」

「知らない!わたしの靴下片方無い!」


寝坊した、二人して。
だっていつも政宗様と電話したあとってドキドキしてなかなか眠れないから。んでとおのり最終回スペシャルで深夜まで見ちゃったんだもん。
一週間ぶんの洗濯、掃除はだいたい土曜日にやるから、今日してないので部屋のなかはめちゃくちゃ。


「うわ、やばい、もう出発しなきゃ!走るよ」



ドアが閉まります。ご注意下さい
プシューッ、

ぜえぜえ。はあはあはあ。全力疾走もむなしく、改札通ってすぐ電車が行ってしまった。
この時間は一日で1番電車が少なく、あと1時間待たないと来ない。
汗だく。


「はーっ、もお、さいあくっ」


がっくり、うなだれてベンチに腰かけた。
しかも改札入っちゃったから一時間駅から出られない…。


「すまん、佐助」

「本当だよもうっ!」


必死に走れど間に合わなかったのは半分以上わたしのせいなのだ。靴下片方見つからなくて、靴下。…靴下のせいだもん…。
佐助ほんとに怒ってる…!
どどどど、どうしよう。と珍しくいらいらしたのを隠さずにいる佐助にわたしは心中狼狽。

しーん。地元駅はいやになるほど静かだった。


「…な、なんか飲む?」

「要らない」


しーん。


今日一日こんなって。
せっかく楽しみにしてたのにな。
ごめん佐助。申し訳なくって情けなくて、すぐ隣に座った。



「…ごめん」


そしたらぽつりと佐助が零した。


「最近仕事とかうまくいかなくて、いろいろ、苛々してた」

「…うん、」

「ただの八つ当たり…。ゴメン」


せっかく久々に幸村とお出かけなのにね、ってまた謝る。
いいのに、そんなに謝らないで。


「疲れてるなら、また今度にする?」

「え、なに、ここまで来といて?」


嫌だよ服欲しいんだから!と却下されてしまう。あ、わたしの気遣い…。

それに気付いた佐助がにっこりわらう。


「ありがと。幸村と出かけたほうが元気になれそう」


えへ。調子に乗っちゃうわたしはまだまだ佐助にはかなわないね。



それから駅で一時間電車くるまでだらだら喋って、乗ってから一時間も待つくらいならバス乗ればよかったねって気付いてまたご機嫌ななめになったりした。
でも紙袋両手いっぱいに持っておうちに帰るのは本当にしあわせ。

楽しく疲れるといっぱい眠れる。教訓!







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