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夢を実現する方法



あ、ケーキが食べたい。
英語の授業中ふいに私はそんなことを思ったわけで。一度そう思ってしまうと、その思いはどんどん強くなっていきケーキが食べたくて仕方なくなってしまった。あーケーキ食べたい。ショートケーキが食べたい。ああでもチョコも捨てがたい。チーズケーキだって大好きだし、フルーツタルトもモンブランも食べたい。授業中だというのにどうしよう。そもそもケーキが食べたいという発想にいたったのは英語の先生が例文にケーキという単語を使ったせいだろう。

どうにも授業に集中できなくなってしまった私は机に上半身を預けて寝ることにした。やべ、お腹なりそう。鳴ったら恥ずかしいじゃないか。まあいいや寝よう。先生のやけに発音の良い教科書を読む声が子守歌かのように私を眠りに誘う。

そして私が見た夢はケーキを苦しくなるほどお腹いっぱい食べた夢だった。それも立海の丸井くんと。やっぱケーキといったら丸井くんだよね。なんてそんなことはどうでも良くて、目を覚ましてしまった時の私の絶望感といったら!さっきまでは目の前の大きなテーブルにケーキが大量に置かれていたはずなのに。全部夢かよ!ありえない!

周りを見回せば皆それぞれに友達と話をしていて、どうやら私が寝ていた間に授業は終わったらしく今は休み時間だった。時計を見てみればその休み時間も後少しで終わるという時間だったので私は早足に跡部のクラス、つまり隣のクラスに向かった

「あとべぇー」

「あーん?なんだよ」

「さっきケーキをお腹いっぱい食べる夢見たんだ」

「良かったじゃねーか」

「うん。でも夢だったんだよなーあれ」

「そうだな。てかお前また授業中寝てたのかよ」

「丸井くんの所行こーかな」

「…何でそうなるんだ」

「ケーキといったら丸井くんでしょ。夢でも丸井くんと食べてたし」

私が笑いながらそう言えば跡部が不機嫌になったのが面白いほどよく分かった。私が丸井くんに会いに行くと言ったことが気に入らなかったのか、私の夢に丸井くんが出てきたことが気に入らなかったのか。まぁ多分どちらもだろう。跡部ったら可愛い奴だな、跡部は私のことが大好きなことを私は知っている。跡部は私に激甘なのだ。跡部に言うと否定するんだけどね、ツンデレってやつなんだよ。

因みに私は丸井くんと知り合いでも何でもない。私が一方的に彼の名前を知っているだけで相手は私のことなんて知らないだろう。氷帝と立海が練習試合をした時などに何度かケーキを食べてる彼を見かけただけだ。

「……………」

「……………」

しばらく見つめ合った後、ため息を吐いた跡部はおもむろにポケットから携帯を取り出すと何処かに電話をかけ始めた。そんな跡部を笑いを堪えながら見ていた私は休み時間の終わりをつげるチャイムの音を聞き電話の向こうの相手に何か話している跡部に小さな声で「じゃーね」と言ってから自分の教室に戻った。

放課後になってテニス部マネージャーの私は勿論テニス部の部室に直行したわけで、その部室の扉を開けた瞬間に大量のケーキが目に飛び込んできても私は驚いたりしなかった。何処から持ってきたのか部屋に対して大きすぎる机の上には様々な種類の美味しそうなケーキたち。口内の唾液の分泌量が多くなる、ほんと美味しそう。

そして机を挟んで向こう側には一列に綺麗に並んだ数人のパティシエらしき人達と、呆れた表情を浮かべながら机の上に並べられたケーキを見ている(数人は私同様に目を輝かせながら眺めている)レギュラー陣。そして口元に笑みを浮かべた跡部が座っている。

あー何から食べよう。迷うなー全部食べたいな。太るかな?もう良いや今日は気にせず食べよう。明日運動するから良いもん。

「名前、お前の為に用意してやったぜ?あーん?」

「あーもー跡部大好き愛してる!」



090529




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