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短編
刻の刻む灰の夢


学校に来てみると、やけに静まり帰っていた。
昼間だからだろうか、校庭には生徒は一人としていない。
とりあえず、俺は学校の職員室へと足を向けた。



「……廃…校?」

告げられた一言を信じられずに、繰り返す。
校長と名乗る中年の男は冷や汗を拭いながら頷く。
今話題のバーコードヘアーと言われる髪の毛が哀れなほど、学校も哀れだった。

三嶋学園は有名な進学校で、80年の歴史を刻んだ教室は埃を被っていた。
聞けば、廃校が決まってもう二年経つそうだ。
今年の4月を迎えると共に、この校舎も取り壊されるらしい。
今年の三年が卒業して、最後の門出を送り終えた今、この校舎は壊されるのを待っている。
なんとも哀れな事だろうか

「…ははは、似てるな俺たち」

なんとなくの呟きが、不思議と自分の胸に残った。
自分は今日死ぬらしい。
そして、ここはもうすぐ壊される。
決められた運命。
抗えない運命。
変えられるとしたら、それは神だけだ。
ちっぽけな人間になど、変えられはしない。
人生の選択は自分が大切に。
しかし、運命は自分じゃない誰かに気まぐれで。

なんと情けない話だろうか
過去を生きた英雄も、神様の気まぐれで死を迎えたのだとしたら…正直、世界に意味など見いだせはしない。
もしも、神が俺たち死を迎える者を笑いながら見ているとしたら、彼らは逆上するだろうか

剣を手に取り、戦うだろうか

死を拒む愚かな猛者として



俺はため息を一つ、机を撫でた。
あいつの座っていた席。
ここで寝て、笑って、怒って、勉強して、悩んで、…そして、死んだ。

突然過ぎる話。実感のわかない現実だった。
確かにここに彼はいた。
俺と一緒にいて、よく笑っていた。
楽しくて、優しくて、……幸せだった。
大切な日常。もう二度と戻れない。

―なぁ、知ってるか?お前が死んだあとも、クラスでは何事もなかった様に時が刻まれたんだぜ

あの日、アイツが死んだ後、俺はよく学校をサボって高台にいた。



俺はふと、何かに導かれる様に高台へと足を向けた。


行こう、あの場所へ

行かなきゃ






‐人間は神の元に生まれ、死んでいく…せめて最後くらいは忘れ去った記憶にさいなまれて…‐





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