胸の穴




くの一教室の一角、わたしは友達と話に花を咲かせていた。


「ってかわたしの彼氏さ、最近愛してるとか好きとか言いすぎてホントにわたしのこと好きなのかわかんなくなってきたんだけどー…」
「……へー」
「まぁわたしは彼のこと好きだし、きっと彼もわたしのこと好きなんだろうけど…、不安なんだ」
「ふーん」


とまあこんな会話がさっきから続いてるんだけど、わたしと言えば適当な相槌ばかり。正直言ってどうでもいい。てか惚気話もここまで来るとうざい。
わたしの彼氏は逆に口数が少なくて、口を開いても好きとか愛してるとかあまり言ってくれない。……あ、なんか不安になってきた。


「でさ、今度の休みにさー」
「ごめん、ちょっと図書室行ってくるね」


休み時間は残り少ないけど友達に断って教室を出た。少し早足で図書室に向かうと、彼はやはりここにいた。静かに近寄って首に抱き着く。


「長次ー!」
「………なまえ、」


静かに、と目で叱られてしまった。ふくれながらゆっくりと離れると、長次は再び名簿の点検を始めてしまった。わたしは長次の前に座り直し、ずいっと顔を近づける。

「ねぇ、好き?」
「……?」
「わたしのこと、好き?」
「………あぁ」
「あぁ、じゃなくて!好きなら好きって言ってよ!」
「………」


え、何で目を逸らすの?もしかして本当はわたしのこと好きじゃなかったの…?


「……!なぜ泣く…?」
「だ、だって長次、最近ちゃんと好きって言ってくれないし…、キスだってあんまりしてくれないし…っ」


不安がピークに達したのか、わたしは泣いてしまった。情けなくて長次の顔を見れないけど、困ってるのは空気で感じ取った。彼を困らせたいわけじゃないのに。すると彼にいつもとは違くぎゅうっと力強く抱きしめられた。わたしは突然のことに対応できずにされるがままだった。


「え、長次…?」
「……好きだ」


さらに突然な告白。随分と久しぶりに聞いたその言葉は、胸の中にすとんとはまった。どうしてだろう、これだけで安心してしまうのは好きだからか、それとも長次だからか。どちらにしろ嬉しかったのに代わりはない。


「でも長次、何で目逸らしたの?もう好きじゃないんじゃないの?」
「そんなわけ、ない。ただ少し…」


恥ずかしかったから…、と本当に小さな声で呟いたのが聞こえた。それだけでさっきまで不安でしょうがなかったはずなのに全てどうでもよくなってしまった。たまらず長次の首に自分の腕を回す。
お互い愛してることを確かめるように。






胸のあな
(ふさがった)







内容がマンネリ化…

090517



あきゅろす。
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