内藤ロンシャン




朝、起きて、ご飯を食べて、学校へ行く。そんな平和が「当たり前」になったのは一年前。あの人からの依頼がきっかけだった。



*******



コンコン

控えめに大きな扉をノックする。


「入りなさい」


中から優しい声の許しを得たので、そっとドアノブを回す。そこに居たのは、ボンゴレファミリー現9代目ボス。


「千景、来て早々悪いが仕事を依頼したい。良いかい?」
「もちろんです、9代目」


お世話になっている9代目の頼みだ。断るはずがなく即答した。


「それで、内容は?」
「あぁ。それなんだが、次期10代目候補の沢田綱吉くんの護衛、及びその周辺の観察だ。リボーンにばかり全てを押し付けるのも悪くてね。それに、リボーンが君を推薦したんだよ」
「リボーンの推薦、ですか?」


確かにリボーンとは同じ殺し屋同士、昔から仲は良いが、最近全く連絡をとっていなかった。お互い忙しいという理由で。


「この内容では君には勿体ないと思うが……いいかい?」
「ふふ、二度目ですよ9代目。
その任務、この麻鴉千景にお任せください」
「うむ。リボーンには連絡をしておいた。ヘリも用意したからそれを使いなさい」
「……拒否権ないじゃないですか」
「まぁ、君の答えを超直感でね」
「……本当、貴方には敵いません…」






******



………という会話をしたのが一年程前。あのあと入学の手続きをし、並盛中に入学した。住む環境は9代目がほとんど整えてくれたおかげで、こちらが準備することはほとんどなかった(ちなみに高級マンションの最上階全て)。リボーンとは日本に来てから数回しか会っていない。それは、沢田綱吉に正体がばれないためだ。僕が殺し屋だと知られたら後々めんどうだということもある。普通に過ごしていればたいして関わらずに護衛ができる。まぁ、関わるのが好きじゃないってのもあるけど。









そして今日は始業式。二年生になり、クラス替えがある。僕にとっては沢田綱吉のクラスがわかればそれでいい。


「(同じクラスが一番楽なんだけど…)」


校門を通ると、ある場所が騒がしいのがわかる。そこへ向かって先程と変わらないペースて歩き、ボードの前まで行くと、自分の名前を探す。


「(あ、あった。A組か。)」


とりあえず自分の名前はあったので、次に次期10代目候補の名前を探す。あれ、無い…?まさか留年?でも中学校は義務教育だし、そんなはずがなく僕はもう一度ボードを見直した。と、A組の一部が異様に装飾されているのに気がついた。もしかしたら、とそのデコレーションの花を取ろうかと考えた時、沢田綱吉が来た。最初は自分の名前がなくて半パニック状態だったが、そのデコレーションに気づいたらしく、どけてみた。


「あった、隠れてた!!」


……本当にあの下だったようだ。
その後ハラハラとボードを見ていたが、誰かの名前を見つけると、安堵の溜め息をついた。恐らく、気になったのは京子だろう。
京子とはケーキ屋で話して以来すっかり仲が良くなったから、これでお茶会の頻度が増えそうだ。よく見ると、ファミリーの獄寺隼人と山本武も一緒らしい。


「(………何か裏がありそうだよ)」


と、ここであることに気がついた。


「(あれ?そういえばあのデコレーションされてる“内藤ロンシャン”って……)」


千景が思い出そうと頭を捻ったと同時に聞こえた煩い声。


「ロンシャン君!無事二年へ進級おめでとう!」
「まーねまーね!ピースピース!!」
「(……やっぱりあいつか)」


ロンシャンとはクラスが一緒だったから、どんな奴か知っている。もちろん、トマゾファミリーの8代目候補だということも知っている。一応情報屋も兼ねているから、これくらい把握している。とりあえず教室に行こうとしたとき、内藤ロンシャンは沢田綱吉に話しかけた。


「オレ、マフィアトマゾファミリー8代目候補、内藤ロンシャン
よろしくね──!!」


いつもの事だが、内藤ロンシャンは自分がマフィアだと公言した。ブンブンと振りながら握手している。沢田綱吉はもちろん乗り気ではないし、むしろ信じていない様子。
すると内藤ロンシャンは自分のファミリーを紹介し始めた。マングスタは軽く会釈したが、後ろのルンガとパンテーラは横を向いたままだ。明らかにおじさんと、ギター背負ってる子と、ゴスロリっ娘が制服を着ている光景は、端から見れば明らかに異様な団体だ。








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