朝です、ご飯です、手紙です




我が家の朝はいつも慌ただしい。


「アレルヤいるー?」
「おはよう。何だい、アヤカ?」
「おはよー!みんな起こして来てもらえる?もうすぐご飯だからさ」


わかった、と言ってみんなの自室へと向かったのは、大学生のアレルヤ。居候の中では一番しっかりしてるし、なによりさりげなく家事を手伝ってくれるのは大変助かる。お母さんはどうせ起こしたって起きないのはわかってるからいいとして、他の居候達はみんな男。小さい頃から一緒に住んでるから気にはしないが、流石にこの間ハレルヤに寝ぼけて抱き着かれた時は心臓が止まるかと思った。それが若干トラウマになってるから、最近はアレルヤに任せている。


「……てか、お父さんも寝てるのかな?珍しい…」


いつもなら私が起きてきた時に既にリビングで新聞を読んでいるはずのお父さんがいない。日曜日だしいいか、とそのままキッチンでの作業を続けた。仕事で特に夜忙しいお母さんに変わって、いつも家事は私がやっている。もちろん8人分の朝食・夕食と弁当を作るなんてできるはずがなく、アレルヤにも手伝ってもらっているが。


「はよー。おっ、今日も美味そうだな!」
「おはよー、ロックオン!悪いけどこれテーブルに運んでもらえる?」
「おー!」


既に起きていたらしいロックオンに、軽く挨拶をしてから手伝ってもらう。ロックオンは頼りになるお兄さん兼お母さん的な存在だ。物心ついた時には家族同然になっていた、居候の中の最年長。


「そういや、オッサン達はまだ起きてねーの?」
「あー、まだ見てないんだ。どうせ休みだろうからいいかなって思ってた」
「それもそうだな。…よし、あとはあいつらを待つだけだな!」


ロックオンに手伝ってもらったおかげで、いつもより早く準備することができた。二人で自分の席に着いて、残りの人達を待つ。


「お、刹那が先か。」
「おはよー、刹那!ティエリアも!」
「………あぁ」
「おはようございます」


朝に弱い刹那が目を擦りながらふらふらと席に着く。それと同時にティエリアも入ってくる。だがこちらはぴっしりさっぱりとしている。


「あ、ハレルヤおはよー!遅いよー」
「…うっせえ」


こちらも刹那と同じように目を細めながら席に着く。(一応)全員が揃ったところで、いただきますと言ってから食事に手をつける。


「お父さん達ホントに起きてこないねぇ…」
「そうだね…。あとで部屋に行ってみるよ」
「お願いー」







********

朝食を食べ終わって、アレルヤがお父さん達の部屋に向かったのを見送ってから、私は食器を洗い始めた。こういう休日は必ず誰かが片付けも手伝ってくれる。
今日は刹那だ。


「せっちゃん、ありがとねー
「……せっちゃん言うな」


あははー、なんて呑気に笑う。刹那は同い年で、しかも身長が少ししか差がないせいかとても話しやすい。何も話さなくとも落ち着いてられる。二人で黙々と作業をしていたら、あっという間に終わってしまった。お茶でも飲もうかと、引き出しを開けた時だった。


「?」


入れた覚えはない白い封筒が入っていたのである。昨日の夜はなかったはずだけど…。気になってたので、封を破いて中身を取り出すと、それは手紙だった。


「…………………は?」
「どうした?」


動かないわたしを見て、不思議に思った刹那が話しかけたみたいだけど、そんなこと気にしていられなかった。


「……はぁあぁぁああぁ!?
「!?」


突然大声をあげた私にびっくりした刹那は目を見開く。その声が家中に響き、みんながなんだなんだと集まる。


「どうしたアヤカ!刹那に襲われたか!?」
「なぜそうなる!アヤカがいきなり叫んだんだ!」


私はわなわなと震える。アレルヤが心配そうに優しく背中を撫で、ハレルヤが肩をぽんぽんと叩いてくれた。


「み、みんな……」


これ…、と今見つけた手紙を渡す。それをロックオンが受け取り、内容を読む。


「何々…?

“親愛なる我が子達へ
いきなりで悪いんだけど、お父さんとお母さん外国の支店に顔出さなきゃいけなくなったから、ついでに海外旅行に行ってきます!暫く帰って来れないけど、6人で仲良くやってね♪

by お母さん”

…………」

「「「「「…………」」」」」


長い沈黙が流れる。

「「「「「はぁあぁぁああぁっ!?」」」」」


5人の心と叫びが初めて共鳴した瞬間だった。

とりあえず手紙で済ますな!



波乱の予感です。

090525修正




あきゅろす。
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