体育祭2




「ほら走れー!」


先生の笛の合図で、一列になった生徒達が走る。今日から、先日決まった個人競技別に練習が始まった。皆あまり乗り気ではないようだ。


「だるい」
「あんたそればっかじゃん」


わたしが零した言葉を返したのは、隣のクラスのネーナ。トリニティ兄妹の末っ子で、ヨハン先生とミハエルさんの妹。ネーナとは、小さい頃からの馴染みで、ヨハン先生もミハエルさんも仕事で面倒が見れない時によくわたしの家に預けられた。
お互い歳も同じだったし、あまり外に出なかったわたしはよくネーナの後をついていった。ネーナは人気者だけど、どこか他人と壁を作っているような感じがして、それを本人に言ってみたら、あんたには敵わないわ!って笑われた。
それ以来更に仲良くなった。お互い変に気を使わなくてもいいから、一緒にいて気持ちがいい。


「そういえばアヤカ、おばさん達旅行行ったんだって?」
「っはぁ!?どこでそれを…」
「わたしの情報網ナメんじゃないわよ」
「さいでした…」


ネーナには話しておこうかな、と考えていた矢先だった。ネーナは、どうして教えてくれなかったのよー!なんて口を尖らせている。こういう所は子供っぽくてかわいい(本人には絶対言わないけど)。


「だって最近会えなかったし…。直接言おうと思ってたんだもん!」
「それもそうね、ならいいわ。でもあの家に女一人でしょ。だいじょぶ?」
「何が?」
「襲われない?」


ぶはっ
いやいやいや、ありえないって!その意味を込めて手をブンブンと振る。


「気が気じゃない人もいるみたいだからねぇ…(双子の片割れとかガンダムヲタとか…)」
「は?」
「何でもなーい」


わたしにはよくわからないけど、ネーナは一人でうんうん頷いている。聞こうかとも思ったが、気づいたら走る順番は次になっている。


「準備しろー」
「だるい」
「それ最初にも言ったじゃん」


ネーナがいつもみたいに子供っぽい笑顔を見せた。こういう笑顔はミハエルさんとそっくり。わたしもつられてへらりと笑った。本番は負けられないな、と思った。






090327
090623修正




第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!