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SPECIAL!シリーズ
第2幕
「佐樹ちゃん!わりぃけどオレ保健室で休んでるよ」
「はぁ!?」

そう言い残して教室から出て行く燎。
授業直前でいきなりそう言われて呆然とする佐樹。

(えっとぉ・・・・・それってサボりじゃん!!)

気づいた頃にはとっくに燎の姿はなかった。

「あっ・・あのバカ・・・ッ!!」

眉間にしわを寄せても本人がいないのだからしかたがない。

「火澄君また消えちゃったみたいだね。」

佐樹の後ろで委員長の高木が苦笑いをしてる。

「またって・・・」
「火澄君は古典の先生に目の仇にされてるみたいでね、よく当てられるんだよ。」
「それは・・その先生じゃなくてもそうしたくなるわよ。」

佐樹は編入してから三日しかたってないが、隣の席の燎がまともに授業受けてるなんてことは見たことがない。

「うーん・・・そうだとしても、火澄君を何度もあてて教科書読ませるんだよ。」
「どうしてどの先生も古典の先生みたいにあてたりしないのかな?」

佐樹の言葉に高木はため息をつく。

「もちろん最初は火澄君集中攻撃されたよ。けど、全部スラスラと答えられたからほとんどの先生が諦めてるよ。けど、基本的にこの学校は授業中あてるってことはないよ。」
「へぇー・・・・・」

(天才って言うべき?ムカつくわね。)
チャイムが鳴り響き、全ての生徒がそれぞれの席へつく。

そのころ燎はというと、保健室、ではなくて校門の外にいた。
とある場所へと向かっているようだ。

やがて、[J]の特別療養室についた燎は、ベットに横たわり、起きる様子のない少女をじっと見つめる。


「・・・・・・・・おはよう。今日もまだ寝てるんだね。佐樹ちゃんも怜も少しずつ学校に慣れてきてるみたいだよ。っていっても聞こえないか。君とは同じ学園の生徒として会いたかったよ。だって、本当は・・・・・君が留学してなかったら同じクラスかもしれなかっただろ?」

切なそうな顔で語りかけるが、全く反応はない。

「・・・・・・・・・・・そうだよな。オレじゃあダメ・・・・・だよね・・・」


ため息をつくが状況は全く変わらない。

「おや、また来てるのですね。」

声のする方、後ろを振り返ると、嵐がたっていた。

「嵐副隊長、どうしてここに?」
「それは私のセリフですよ。今は授業中のはずです。」
「は、ははは・・・ちょっと腹痛がして保健室で休んでたらよくなったから、かるーい運動でもしてから戻ろうかなぁってことで散歩ついでに様子見に来ただけですよぉ」

あからさまに嘘丸出しの燎の言葉を嵐はさえぎることなく、笑顔で聞いている。
その胡散臭い笑顔持続していることが恐ろしい。

「そうですか。皇丘からここまではかなり距離ありますよねぇ?それでは大変疲れたでしょう?ああ、そういえば、少し前に本部の正門にタクシーが止まっていたらしいですねぇ。珍しいですよね。」
「みっ見てたんですか!?」
「さぁ?」

その言葉に青ざめる燎。

(この人って千里眼!!?)

「どうしました?顔色よくありませんよ?」
「だ、大丈夫ですっ」
「ほらほら無理しないで下さい。今日は樹医務課長が当直ですからじっくり診てくれますよ。さぁっ行きましょう。」
「ごめんなさいっっ学校からタクシー使って来ました!ごめんなさい謝りますからそれだけは勘弁して下さいぃぃぃっっ!!」
「やはりそうですか。今度やったら確実に樹医務課長までラッピングして届けますからね。」
「こわー・・・・・」

(副隊長さっき笑顔でとんでもないこと言ったよ!!)

改めて副隊長の恐ろしさが身にしみてますます青ざめる燎だった。

「それにしても・・・風花さん目覚めませんねえ。」
「一瞬でもいいから起きてくれればいいのに・・・・・オレ・・風花ちゃんにとっては役立たずだなぁ・・・」

燎の呟きに嵐は風花を見つめたまま顔を曇らせる。

「かなわない想いですか。その気持ち、理解できますよ。」
「副隊長もそんな相手がいるんですか?」
「そうですね・・・・・・」

嵐は言葉を選んでいるかのように言葉を止める。

数秒後、再び口をひらく。

「私はいけないヒトを好きになってしまったかもしれません。」
「へ?それってオレが知ってるヒトですか?」
「どうでしょう?」

嵐はとぼけるが、燎はさらに食い下がってみる。
もしかしたら、嵐の弱点をつかめるチャンスかもしれないから。

「じゃあヒント下さいよー」
「ヒントですか。そうですね・・・・・」

嵐は燎に右腕を伸ばすと、束ねている髪をいきなり掴んだ。
髪を掴まれた燎は驚きの表情を向ける。

「あなたみたいにきれいな金髪の方です。」

そう言って妖しく微笑む嵐に燎はゾッとした。
髪を放して欲しいのに言葉すら出てこない。

「脅かしてしまったみたいですね。すみません。もちろん誰かさんみたいに勇火隊長ではありませんよ。ついでにあなたでもありませんからね。」
「び、びっくりさせないで下さいよー。でも、勇兄ぃでもオレでもないならオレの知らないヒトですよ」
「そう・・・・・そうかもしれませんね。あなたじゃなくてガッカリですか?」

嵐の言葉に燎は力いっぱい首を横に振る。

(これ以上ヤローに好かれるなんて冗談じゃない!!)

「冗談ですよ。やはりあなたはからかい易くて面白いですね。」
「やめて下さいよーーっそういえば、どうしてここに来たんですか?」
「どうしてって、風花さんの様子をあなた方に報告しようと思ったのですよ?気にされてると思いますから。」

(そういえばそうだ・・・)
「そろそろ学校に戻ったらどうですか?佐樹さんと怜さんには内緒で来てるのですよね?」

嵐に促されて、燎は腕時計を見ると、慌てて特別療養室を飛び出した。

そのころ、佐樹は授業が無事に終わり、音楽室へと移動しようとしていた。

(燎ってば戻ってこないわねー。サボりよサボり!!)

「さーきちゃーん、火澄戻ってこねぇなぁ?一緒に音楽室行こうぜ。それとも一緒にサボって遊ぶか?」

声をかけてきた狗座を中心とする5人が下品に笑う。

(こんな奴燎じゃなくても相手にしたくないわよっ)

佐樹は聞こえなかったかのように、教科書などを持って足早に廊下へ出ようとする。
その肩は狗座に掴まれて、前に進めなくなってしまった。

「つれないことするなよ。」

下品な笑顔を持続したまま狗座たちに囲まれる佐樹。
クラスメイトは狗座と関わりたくないようで誰もが見ないようにしながらさっさと教室を出て行く。

「放して!」

肩をつかんだまま正面にまわった狗座を睨むが相変わらずニヤニヤとしている。

(燎のバカバカッ!なんでこんなときにいないのよ!!)

そのとき一人のクラスメイトの声が教室に響いた。

「柏木さん。古典の先生が今すぐ職員室に来て欲しいって言ってるよ。」

その言葉に舌打ちをして狗座たちが離れていく。

「大丈夫?」

声をかけてきたのは高木だった。

「ありがとう。でも先生の用って・・・」
「嘘だよ。狗座君たちを追い払う口実だよ。」

高木の言葉にほっとする佐樹。

「おれたちも行こうよ。遅れるよ。」
「うん、そうだね。本当にありがとう。」
「どういたしまして。」

(委員長って優しいなぁ。燎よりずっと頼りになるじゃない。)

佐樹たちはすっかり自分たちだけになってしまった教室をあとにした。


「火澄君音楽も休むのかな?」
「多分そうよね。」

高木と一緒に苦笑いする佐樹。

(こんなとこ怜に見つかったら怒りそうね・・・)

「おい。」

佐樹はそう考えていた本人が目の前の教室から現れたのを見てうな垂れる。

「・・・・・・なんでいるのよ。」
そう呟く佐樹を怜は呆れた顔で見る。



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