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SPECIAL!シリーズ
冒険編1
田舎のとある町に住んでいる普通の学生であるマツリ、学校は少し遠い為、バスで通っている。
今日もバスは定刻通りにバス停に到着。
マツリはさほど混んでいないバスに乗ると、いつも通りに一番後ろの隅の席に腰掛ける。

マツリは考えごとをしていた。

心理学の先生だったかな?
人は一度座った席には何度も無意識に座ってしまう習性があるなんて言ってたのは。
そんなことあるはずないって思ってたのにこうしてほぼ毎日同じ場所に座ってしまうなんて間違ってないのだと最近思う。

今日だっていつもと何も変わらずにマツリはバスに乗った。
そして、変わらない日々を過ごす・・・・・はずだった。


(これは・・・どういうことだろう・・・)

目の前の光景に呆然とするしかなった。
何故なら、お店・・・正確には西部劇に出てくるようなところにいつの間にかいるからだ。

(荒くれ者が集う酒場って言葉がぴったり・・・・・ってどういうこと!!?)

申し訳ないが、現代人のようなまともな格好の人物が1人も見当たらない。

(ま、まって!!冷静になろうよ自分!えーと、まずは目の前のテーブルには私が食べていたと思う食事の後、そしてその前にももう1人分の空の食器。で、私は何を食べたの?ていうかもう1人分て誰の!?ちがうっっそうじゃないってば!私ってバスの中にいたんだよね?)

「マツリ、飲み物のおかわり持ってきたよ。」

パニクってる私に金髪の男性が話しかけてきた。

(えっっええぇぇーーーーーーっっ!?)

その金髪の男は二十歳位で、両方の肩に紺色の肩当、胸部には肩当と同色の鎧、腰には剣といういわゆる剣士の格好だが、その顔は見覚えがある。

「ゆっゆゆゆゆゆっ勇火隊長ぉぉぉぉぉぉっっ!?」
「どうしたのマツリ?」
「だって!なんでここにいるの!?」
「なんでって僕は君のパートナーだよ?」
「へっ?」

(どういう意味?)

そういえばと思い、自分の格好を確認してみる。

深い緑色のマント、じゃなくってローブに微妙な長さのワンピース、茶色い皮のブーツ、テーブルに立て掛けられている魔法使いが持つような杖。

「もしかして私って魔法使いだったりして・・」
「そうだよ。僕と半年前に2人でパーティーを組んだじゃないか。」

(何ぃぃぃっっ!?勇火隊長と半年も2人っきりですとぉぉぉぉっ!?ごちそうさまですっっ)

「ねぇマツリ?聞いてる?」
「うんっ。で、私たちってこれから何するの?」

その言葉に大きくため息をつき、呆れた表情になる勇火。

「大丈夫?僕たちはこの街の山奥のドラゴン退治に行くところだよ。」
「へぇーーすごいねーー。」
「他人事みたいに言わないでくれるかな。僕と君で退治しに行くんだよ。」

心配と不安の入り混じった表情を向けられた。

(ちょっ困った顔も良いじゃない♪なんでこんなことになってるのかわからないけど覚めて欲しくない夢ってことで良いよね♪)

「そうねぇー。じゃ、この店出たらドラゴン退治に行くってくとだねっ勇火隊長♪」
「そうだけど、その隊長ってやめてくれないかな。ワケわからないよ。それに、僕の名前はユウヒ・フィレッタなんだけど。」
「じゃあ、ユ、ユウヒって呼んでもいいの!?」
「前からそう呼んでなかったかな?」

(キャーーッッ呼び捨てだよっ呼び捨てっっ!!)

興奮するマツリをユウヒはますます心配そうに見る。

「大丈夫?」
「そんなに私のこと気にかけてくれるだなんて・・・感激ぃ・・・」

うっとりとした表情でいうマツリにどうやらユウヒは危機を感じたらしい。

「と、とにかくその様子なら大丈夫かもね。そろそろ向かおうか。」


ドラゴンの棲むところまでは歩いて向かうこととなった。
どうやらこの街は多くの冒険者が立ち寄るようで歩きながらもそれらしい人を何人も見掛ける。

(こんなにパーティーいるのにドラゴン退治を私たちだけが頼まれるなんて、もしかして私とユウヒって結構強いってこと?)

「ねぇ、ドラゴンって誰でも倒せる、なんてわけないよね?」
「マツリ不安?僕たちは・・こんなこと言うと自惚れてるって思うかもしれないけど十分強いよ。自信もって。」
「う、うん。」

(嬉しいけどさ、実戦経験ないからますます心配だよーーっ)

「大丈夫。僕たちなら出来るよ!!」

励ますかの様にユウヒは力強く言う。

「そ、そうだねっっ」

(なんでだろう。ユウヒにそう言われると本当に大丈夫そうな気がするかも。)

「それにしても・・・・・依頼主が領主なんだから馬くらいは用意してくれてもいいのに。」

(ユウヒってば腹黒?でも馬なんて乗ったことないよっ)

「まあまあ気楽に行こうよっ」

その言葉にユウヒは黙ってうなずく。
そんなわけで、2人はひたすら歩きつづける。

(それにしてもユウヒって近くで見るとカッコいいよねっ。王子様ってこういう容姿のこというのよねぇ。私一生このままでも良くない?そうだよっ同じパーティー=命懸けでユウヒを守る&守られるっていいじゃん!!)

「ふふっうふっうふっふっふっふっふっ」
「マツリ?」

突然怪しく笑い出したマツリをユウヒは怯えた表情で見る。

(ちょっっいい顔じゃん!!可愛いッッ!)

バンッッ

「痛ッッ」

頭に痛みが走り、顔を歪ませる。
横ではユウヒが右手を拳にして笑顔。しかし怖い。

「これから戦いに行くって時にふざけてると怒るよ。」
「もう怒ってるじゃないっっ」

(でもこれって愛のムチよね?)

再びにやけそうになるマツリを呆れて見る。

(カメラッカメラ欲しいよぉっっ今こうしている瞬間も激写!!ってぇ・・・そういう場合じゃないんだよね。)

顔を引き締めてユウヒと歩きだす。


街からだいぶ離れ、森の中を歩きつづける2人。
そのとき、近くで草の動く音が聞こえてきた。
明らかに風の音ではなく、何かが近づいて来ているようだ。

ユウヒは立ち止まり、鞘から剣を出すと身構える。

(こういう場合ってもしかして・・・)

草陰から飛び出してきたのは2足歩行の猿、ではなくて猿のようだが、目はひとつだけのこん棒を持ったモンスター。

「でたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!」

慌てるマツリにかまわずユウヒはモンスターに向かって行く。
こん棒を振り回してユウヒを近づけさせまいとするモンスター。
しかし、素早い動きであっという間に懐にもぐりこむと躊躇いなく剣先をモンスターに向かわせるユウヒ。
モンスターの断末魔が響き、音ををたてて倒れるモンスター。

「ユウヒすっごーーっいっっ!!」
「あのね、あの程度はたいしたことないってば。それよりももっとレベルの高いモンスターが出てきたら悲鳴上げてないで援護頼むよ。」
「援護って・・・・・どうやって?」

その言葉に深いため息をユウヒはつく。


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