SPECIAL!シリーズ クリスマスデート2 寮の自室から怜と佐樹が[J]の正門を出て行くのを見送る勇火。 「さて・・・準備しようかな。」 (急用と伝えたが、本当は嘘。今日は{彼女}に喜んでもらおう。) 11時頃、[J]の敷地内にある、自宅・・火築家へと向かう。 会長である父より同じ敷地だし、次期会長候補だから自宅から通勤を薦められてはいるが、特別扱いされることを快く思わない勇火はあえて寮で生活している。 自宅から車の鍵を持ち出し、自分の白い車のエンジンをかける。 ([J]の業務用のを私用で使うわけにはいかないからね。) ・・・と、言うより車にしっかりと[JASUTISU]と書かれているのは使いたくないだけ。 今日は[J]の勇火ではなく、一人の男として出かけるのだから。 正門近くに車を停める。 車から降りると丁度{彼女}が正門から出てきた。 {彼女}といっても付き合っているわけではない。 ただ、勇火が特別な感情を抱いているだけにすぎない。 (今日こそ伝えよう。) その気持ちを胸に{彼女}の名を呼ぶ。 勇火に気付いた{彼女}は笑顔でこたえる。 笑顔で{彼女}――・・風花を迎え、助手席に座ってもらう。 勇火はある場所に向かうため、車を動かしだす。 「隊長、佐樹ちゃんと出かけなくて良かったのですか?」 「うん、僕や風花よりもあの2人なら互いに心開きやすいと思うよ。」 (ま、半分本音で、半分君と出掛けるための建前だけどね。) 「そうですか?隊長になら2人とも心開いてると思いますよ?特に怜は崇拝してるくらいじゃないですか。」 「崇拝って・・・」 勇火は苦笑いをする。 ・・・・・確かに思い当たるふしはあるが。 「そうじゃなくて・・・・・僕は平等にっていうか、本音でぶつかりあえる相手になって欲しいんだ。それに、佐樹ちゃんには僕や風花にはないものを持ってる気がしてね。何となく、だけど。」 風花は首をかしげる。 (まあ、これは僕の勘だけどね。) 「それで、どこに連れてってくれます?」 「行けばわかるよ。」 都内を走っていた車はやがてビルが少ない道を走る。 「あれ、もしかして海に向かってませんか?」 「さすがだね。その通り。」 「冬の海も良いですよね。でも、寒くないですか?」 「大丈夫。寒くない所だから。」 「ここだよ。君が昔来たことがあるって言ってた所だよ。ここのお店、また行きたいって言ってたでしょ?」 2人の目の前には真っ白な壁で作られた建物。 高級そうな雰囲気を感じさせる。 「確かにだけど・・・でもここって高いですよね?私はいつも家族で来てたし、かなり前のことだから曖昧ですけど、でも・・・」 「いいから。支払いの心配はいらないよ。」 「そっか・・・そうですよね。なんか、おかしいですね。以前の・・・風祭財閥のお嬢様だった頃はこんな心配しなかったのに・・・」 「風花・・・ごめん・・・・・」 「謝らないで下さい。私、ここにまた来れたことすごく嬉しいです。」 レストランの中に入ると客はほとんど見当たらない。 「そういえば今日って平日なんですよね。」 「そうだね、料理はもう予約してあるよ。シェフは以前と変わってないよ。」 あまり待つことなく料理が運ばれてきた。 「遠慮なくどうぞ。」 「お言葉に甘えさせていただきます。」 幸せそうに料理を口に運ぶ風花を見てほっとする。 料理は確かにおいしい。それ以前に相手の笑顔が見れることが何よりも幸せだと勇火は感じる。 話しながら、ゆっくり食事を終わらせて、店を出る。 「水族館は近いから歩いて行こうか。」 「はい。」 時々強い風が吹くと、風花が風を調節して強風に当たらないようにする。 水族館に到着すると、風花はますます顔を輝かせる。 館内はクリスマス用にデコレーションされ、普段より華やかとなっている。 仕事中では見ることが出来ない風花の嬉しそうな笑顔を見て勇火はほっとする。 別に風花が[J]では笑顔を作っているというわけではない。ただ、何か物足りなさを勇火は感じていた。 周りはカップルや親子が多い様子。 (僕たちは周りらみたらどう見えるのかな? カップルにみえるのなら嬉しいけど。) 「隊長?どうしました?」 「ごめん。ぼーっとしてたみたいだね。」 「隊長働きすぎなんですよ。今日ぐらいはのんびりして下さい。」 「そうかな。なら・・・今日だけは勇火って呼んでくれないかな。」 「えっ」 勇火の突然の申し出に風花は驚いた表情になり、赤面していく。 「そ、そうですよねっせっかくの休みなのに隊長だなんて・・ゆ、勇火さんですよね。」 (ちょっと強引かな?) ショーが無事におわり、勇火達は水族館を出る。 「寮に帰るのに時間掛かるからそろそろ出ようか。」 「そうですね、あ、みんなにクリスマスケーキ買っていってもいいですか。」 「わかった。」 車を走らせ、ケーキ屋の付近で停める。風花が買いに出かけている間、勇火は風花へ渡そうと用意したプレゼントを取り出す。 「買ってきましたよ〜」 笑顔で風花は戻ってきた。 「おかえり。はい、クリスマスプレゼント。」 「え・・・・・あ、ありがとうございます。」 助手席に座り、プレゼントを見つめる。 「あけてもいいですか?」 勇火はうなずき、風花はゆっくりと包みを開けていく。箱を開けた風花の手にはルビーのネックレス。 「ルビーには昔から危険から身を守ってくれるって意味があるからね。君は時々無茶をするからちょうど良いと思ってね。」 「ありがとうございます。私のも受け取ってもらえますか。」 風花から渡された包みを丁寧に開けていく勇火。 中には腕時計が入っていた。 「あの、隊長、勇火さんにとって有意義な時間を刻んでいけることが出来たらっておもって選んだのですけど、迷惑だったら・・・・・」 「そんな事ないよ。喜んで使わせてもらうよ。」 勇火は時計を腕につける。 (そうだ、いまこそ言わなければ・・・・・) 勇火は隣に座る風花の顔をしっかり見つめる。 「風花、僕は・・・」 プルルルルルルル・・・・・・ 突然勇火の携帯音が鳴り響く。 (こんなときにっっ!!) 「はい、・・・・・そうですか、わかりました。」 携帯を切ると勇火はため息をつく。 「お仕事ですか?」 「うん、父からいますぐ戻って欲しいって。家の事情なんだ。」 「たいへんですね。あの、さっき・・・」 「ああ、今更だけど、Happy Christmas。」 「本当ですね。でも、今日は本当に楽しかったです。Happy Christmas。お仕事頑張りましょうね。」 (言うタイミング逃したな。今は君の笑顔を見れただけでも良しとしよう。) NEXT STAGE・・・・・。 [*前へ][次へ#] [戻る] |