行き場を失った母の腕(リボーン) オレを呼ぶ優しい声がする。 その声はハルや京子たちのと変わらない少女の声だが、そこに滲む感情は明らかに少女のもつものではなかった。 女の名前はなまえ。 ビアンキと歳は一緒。 生粋の日本人。 よく見える目をもつ特異な存在。 それ故にその身を狙われる。 「リボーン、おいで」 幸せそうに両手を広げる少女は、オレに産まれてすぐ死んだ息子を重ねている。 赤ん坊なのに喋るオレを不思議に思わないのか。 もしかしたらわからないのかもしれない。 コイツは愛した男と愛する息子を奪われた時に壊れたんだろう。 「何してたの?一人で出掛けたら危ないよ?今度は私と一緒にお出かけしましょ?」 オレはコイツの腕に抱かれて、好きにさせる。 黙ってコイツが話す言葉に耳を傾ける。 可哀想な女だった。 哀れだと思った。 そう思うのは少なからずオレがコイツを愛しているからだろう。 そしてその能力を利用しようとしている。 その詫びのつもりなのかもしれない。 オレがコイツの前であまり喋らないのは。 「なまえ」 「なぁに?いつもはママンって呼ぶのに?」 出会った時から壊れたオレの女。 [*前へ][次へ#] [戻る] |