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ひとめぼれ(L)




それは予感。


寝癖がない朝
占いも1位
茶柱は立って
いつもは私の目の前を横切る黒猫もいない


きっと今日は良いことが起こる。


(そう、もしかしたら運命の出会いがあるとか!?)


そんな風に浮き立つ気分のまま学校に向かった。



バッシャーン!!



いきなりの不運。

昨夜の通り雨でできた水溜まりを通った車に思い切り引っ掛けられたらしい。


(たしかこーゆー場合、車の運転手訴えたらお金もらえるのよね?)


水をはねつけた車をじっと睨み付ける。
もちろん無言で(度胸がない)


そのまま無視して行ってしまうと予想していたけど車は一旦止まって脇に停めた。



「お嬢さん、申し訳ございません」



中から出て来たのは優しそうな老紳士。
ピシッとした服装。


水で汚れた私の制服を見てかなり落ち込んでいるみたい。


「いえ!大丈夫ですから…」


物腰優雅な態度と優しそうなおじいさんと言う(私的には)意外な組み合わせに思わず逃げ出したくなった。


(上流っぽい………って!ひいぃっ!なんか車も高そうですよ!?)



よく見たら生リムジン。



(逃げよう!!)



そう決めて鞄を握り締めた時、老紳士の後ろに控えるリムジンの後部座席から人がゆっくり降りてきた。


(ギョギョ……!!なんかキショッ!!)



ギョロッと開かれた瞳にふちどるアイライン……ではなくクマ。

いつ洗った!?とツッコミたくなるごわごわした黒髪。


くたびれたシャツにGパン。


巨大定規をあてがいたくなる曲がりきった背中。


(なんか見られて…ひっ!!近付いて来るうぅ!!)



恐怖で身体は動かなかった。


「あっ……、ほ、ほ、本当に大丈夫ですから―――!!」


正に脱兎。


「逃がしません」



ガシッ!!



「◎※■△§@☆!!?」



本当に恐ろしい時は声が出ないとは本当だ。


肩を片方掴まれただけなのにびくともしない身体。


(終わった……私の人生)



「貴女の制服を汚してしまったコトに対して償いをさせて下さい」



(振り返れない弱虫な私―――――!!)



「償いだなんて……!!全然全くもって要りませんから(手を離してぇ!!)」



「竜崎、女性にはもっと優しく……そしてストレートに告げるべきです」



老紳士、良いこと言った!



私も必死に頷く。
やっぱり振り返れない。



「私と結婚して下さい」



「はい!わかりましたからもう…………結婚?」



は、はひ?



「あっさり決まりました。とても嬉しいです」



「いやいやいや!!!ええぇぇ!?嘘ですよね!?冗談ですよね!?」



嫌だなぁこの人!冗談は顔だけにしなさいよ!!



「本気です。本気と書いて『マジ』と読みます」



老紳士なんて涙流してる!!


「今日初めて会った女子高生にプロポーズ!?」



向き直って初めて真正面から彼を見た。


「なまえさんのことは前から知っています。話したのは初めてですが……」


なんて言って嬉しそうに笑うから不覚にもときめいてしまった。


でもやっぱりキショイ。



「愛してますなまえさん。私としたことが一目ボレでした。結婚して下さい」



「あのね、順番が………」



でも彼の真直ぐな目を見ていたら、ほだされてしまいそうだ。



「………わかったわよ。私が貴方を好きになったら結婚する」


「では、すぐですね」







彼があの超有名な『L』で、実はイトコの月を盗撮、監視している時にたまたま月の家に来た私に一目ボレをしたと知るのは遠くない話。

そしてまた、私がLを好きになるのも、そう遠くない未来の話なのです。




ひとめぼれ
勿論、幸せにしてくれるよね?



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