君にまっしぐら(赤)
誰にも負けたことがない、と少年はこともなげに言ったから、コテンパンにしてあげてみた。それがわたしの運のつきってやつでした。
「バトルしようよ」
わたしが赤い少年を見るときはいつもこの台詞をきく羽目になる。そして次にくる台詞。
「僕がかったらなまえは僕のものだから」
いやらしさのかけらもない、澄んだ瞳で、整った顔に微笑を浮かべて、ましてや少年と呼べる年齢の彼が言う台詞じゃない。
どうやらわたしは厄介なタイプの人間に好かれたらしい。
「嫌です。わたしは君のものにはなりません」
わたしが行く先にふらりと現れてはバトルしてとせがむレッドくん。かなり変わった子供だった。そんなにわたしに負けたことが衝撃だったんだろうか。
「ほら、強い人なら世の中に沢山いるのよ?カントー以外にもね。レッドくんの世界はまだまだ狭いの」
わたしだってここまで強くなるまでに何回も負けた。悔しくて、悔しい思いをパートナーであるポケモンたちにさせたくない意地とわたしのわがままで強くなってきた。
「世界とかどうだっていい。なまえに勝ちたい」
「だったら勝てばいい。そこに何でレッドくんのものになると言う付属がつくんだろう?」
心底不思議、とレッドくんに言えばレッドくんは目を丸くして言った。
「なまえが好きだから」
胸がキュンてなったのは気のせいにしたい。
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