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白石蔵ノ介
白石蔵ノ介
空が段々と薄暗くなり始めた黄昏時、普段ならガヤガヤと騒がしいのに、今日は私と蔵ノ介以外居なくなった部室で私は掃除を、蔵ノ介は日誌を書きながら会話をしていた。
『今日は皆調子良さそうだったね。』
「そうやな。特に金ちゃんは部活終わった後謙也とたこ焼き食べに行く約束しとったからなぁ。」
『そうなんだ。部活後のお楽しみのお陰であんなに張り切ってたんだね。』
「金ちゃんらしいやろ。」
『ふふ、うん。』
こうして部活終わりにそれぞれ別の作業をしながら今日の皆の調子はどうだったかを話すのが私と蔵ノ介の日課となっている。
「あ、そう言えば金ちゃんがどうせなら皆で行こうって言っとったわ。」
『え、そうなの?じゃあ皆待たせちゃってるじゃん。早く終わらせよう?』
「そやな。」
外で皆を待たせてしまっている事を知った私は、淡々と掃除をしていた。
そんな状況が続き、シーンと静まった部室に、同じく淡々と日誌を書いていた筈の蔵ノ介の声が響いた。
「なぁ、しりとりやろうや。」
『は?何いきなり。今そんな事してる場合じゃないでしょ。』
「ええから。ほな俺からいくで。」
『もう、仕方ないなぁ…』
「ほな始めんで。んー…タコ焼き」
『キノコ』
「コアラ」
『ら…ランプ!』
「ぷ…プリン…何て言わんで。プレゼント!」
早く皆の所に行かなきゃならない時にしりとりをしよう何て言い出した蔵ノ介が少し理解出来なくて、適当に答えながらさっさと掃除をして、早く終わらせようとした。
『トンカツ』
「ツナ」
『な…夏』
「付き合おう」
『うー………あれ?』
しりとりをしながらも変わらず手を動かしていた私だったけど、今までとは違うその言葉に、思わず手を止め、蔵ノ介の方に振り返ってしまった。
「ほら"う"やで。」
そして、蔵ノ介のまるで誘導するかの様な言い回しに、私はそのまま導かれるまま…
『…うん。』
「はい、お前の負けや。」
余裕たっぷりという感じでありながら、どこか優しい笑みを浮かべる蔵ノ介に私は、これからもずっと敵わないんだろうな、と感じさせられる。
そして、今までやっていた作業を途中で投げ出した蔵ノ介に手を引かれ、そのまま抱き締められた。
皆…もう少し待ってて貰っても良いですか?
END.
少し修正しました。
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