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目の前の子供は僕の知るあの子だけど、僕の望むあの子ではない。僕との記憶をほんの一握りしか持たない、今の僕を知らない。
僕が欲しいあの子は、もう帰っては来ないから。この子も、いずれ今の僕の元から帰ってしまう。
ならば、今のうちに。

「沢田綱吉」

名を呼ぶと困った様に笑う子供にやる瀬なさを感じて、腕を振る。反射で目を閉じた一瞬に足払いをかけその小さな身体を組み敷いた。
衝動だった。理性に欠けていた事は明白だ。しかし止めはしない。

「ひ、雲雀さ…」

「黙って」

怯える子供の細い首筋に舌を這わせシャツの内へ手を滑らす。ふるりと震えたのを感じてそのまま脇へ進めれば小さく跳ねる。

「ひゃっ」

止めようと伸ばしてきた手を無視してそのままその辺りを行き来すれば……

「あはははっ…ひー…くすぐったい!」

「……………」

何とも色気のない声が飛び出してきて、やはり子供なのだと、認識させられた。

「萎えた」

一言呟いて、転がした子供の上から立ち上がる。
子供は一連の行動が理解出来ないのか不思議そうに首を傾げただけで、もそもそと起き上がってきた。
何となく腹が立ったので(八つ当たりだというのは承知している)軽くデコピン。
そうすると面白い様に元の位置に転がって行く子供。

「何するんですかっ」

「煩い」

分かっているよ。いくら同じ沢田綱吉でも、幼い君なら意味がない。今の僕には君でなくては。
ああ、やはり僕は“君”が良いんだ。
早く、帰っておいで。

「……綱吉」

自分を呼んだのではないと分かったのか、もう子供は何も言わなかった。





end*

未来編切ない…





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