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SS
2700〜

2700




自室で持ち帰った事務仕事をこなしていた僕がアルコバレーノに呼ばれたのは夜の12時を回った頃だった。

「何です?こんな時間に」

「ツナの様子を見てこい」

ノックを受けて扉を開けた瞬間こうだ。しかし自分で言っておきながら苦々しい表情のアルコバレーノに文句を言うつもりはない。

「……、まぁ断る理由もありませんが何故僕に?」

「本誌で出番のねぇオメェを哀れんでやってるんだぞ」

「おやおや、それはどうも」

僕が厭味を受け流すと、彼はチッ、と舌打ちをして表情を隠す様にボルサリーノを引き下げた。

「早く行ってやれ」

「では」


行ってやれと言われて向かったものの部屋には既に居なかった。トイレやダイニングにも姿はなく、どうしたものかと思案する。

「…そういえば、以前夜中に偶然会いましたね」

あの時は確か、彼が超直感でキリ番の接近を感じたのだったか…。
今回もそうかもしれないと、僕は足をエントランスに向けた。

「読みが外れてしまいましたか」

しかし、エントランスに着いてみるとそこにも彼は居ず。カウンターは確かに2700の一歩手前なのだが…。やれやれ、と肩を竦めた所に声が掛かった。

「骸?何してるの?」

「綱吉君……、」

ん?と首を傾げて来る彼にため息が洩れる。何故いかにも風呂上がりな格好なんだ。

「君こそ、何を?」

「ランボが寝なくて相手してたら汗かいたから、キリ番がくる前にお風呂入っとこうと思って」

「もう2699ですよ」

「嘘?!」

「本当」

「マズイ!着替えて来なきゃ!ごめん骸間繋いどいて!」

「…おやおや」

ドタバタと走って行く後ろ姿を見送ると、丁度カウンターが2700を示したので。

ガチャリ

「ようこそいらっしゃいませ、そしてキリ番おめでとうございます」

扉を開けて先にお客様を迎えたのだった。

(リクエストについては、綱吉君に残しておきましょう)







「2700ありがとう!ご、ごめんなさい遅くなっちゃって…。リクエスト出来るから良かったら足跡残してね!」





3000





綱吉はカタカタと震えながら目線を膝の上に置いた手に落としていた。あまり顔を上げたくはないのだ。

事の発端は綱吉が一人になった昼過ぎだった。おやつでも食べようかとココアを入れている時に、ギクリと嫌な予感がして。とにかくその場を離れた方が良いとの超直感に従って逃げる為にエントランスの扉を開けたのが間違いだった。

「ツナヨシ。王子を出迎えなんて気が利くじゃん?」

…バタン、速やかに閉めた。
他の出口、そうだこの際窓から出ようそうしようと踵を返せばマントを被った子供が立ちはだかっていて。

「ま、マーモン!いつ入った?!」

「ム。僕の事は良いから、ボスが破壊する前に早く扉を開けた方が良い……、!」

ドガシャーン!
遅かった。派手な音がして扉が綱吉の横を吹っ飛んでいった。

「…ざ、ざ、ザンザス…!」

その先から現れたのはザンザス率いる恐怖のヴァリアーの面々だったのだ。
そして許可なく進入してきた彼等に強制的に引きずり戻され、冒頭に戻る。

ザンザスは気に入らないとすぐ物を投げるし(スクアーロに)、スクアーロは避けないし声でかいし、ベルは意味なくレヴィにナイフを投げるし、マーモンは屋敷内の調度品を品定めしてるし、ルッスーリアは小指立てて紅茶を飲むし、レヴィは顔が怖い。
せめてもの現実逃避に彼等を見ず俯いている訳だが、視界の端をまた物が飛んで行きスクアーロの怒鳴り声が耳をつんざく。どうやらザンザスは相当ご立腹らしい。

(怖い怖い怖い誰でも良いから帰ってきて…!)

綱吉の願いが通じたのか、その時ブーッとブザーが鳴った。この場を離れる口実が出来たと、嬉々としてエントランスに向かえばカウンターが3000を回っている。そして破壊されたまま扉が放置されている為、3000番目のお客様と目が合った。

(…まずいっ!中にはザンザス達が居る!かと言って俺が出ると怒りそうだし…)

どうしよう、と悩んだ時気づいたヴァリアー達が一斉にエントランスへ向かってきた。

「!!ちょっと待ってて下さい!」

綱吉は咄嗟にグローブを装着すると倒れていた扉を立てかけ目隠しにし、零地点突破初代エディションでなだれてくるザンザス達をまとめて凍らせてしまったのだ。

「………」

ガタ、

「お、お待たせしました!Grazie3000です!リクエストできますからゆっくりして行って下さいっ」

妙に爽やかに笑う綱吉の向こう、気味の悪い氷像が見えた。





8500





綱吉は困惑していた。その原因は肩に微かな重みを乗せている人物にあった。

「デーチモ。出掛けるのか?」

頭上から掛けられた声に見上げると金髪から覗く綱吉と似た顔…綱吉のご先祖、ボンゴレプリーモだ。
何故亡くなった人間が居るのか、綱吉は早々に考える事を止めてしまったので謎のままだ。

「違います。もうすぐお客さんが来るんですよ」

肩に掛かる重みはリボーンやランボよりも軽く、しかしオーラというのか、存在感が凄まじい。
そんなプリーモは一定距離綱吉からは離れられないらしく、ずっとこうして肩に乗っかる様についているのだ。

「約束か?」

「いえ、キリ番なんです。ほら、あのカウンターが8500になったら、ここに通じる様になってるんですよ」

エントランスで数字が変わるのを待っている間プリーモが尋ねてくるのに、備え付けてあるカウンターを指差して答えると、ふむ、と頷いたプリーモ。

「いつもデーチモが迎えるのか?」

「はい。俺は今のところ全部出迎えてます。でも、大体他の誰かも一緒かなぁ」

「誰かとは?」

「えっと…前回はザンザス達で(凍ってたけど)、その前は骸、その前は骸と白蘭、その前はリボーン、だったかな?」

「…ほう」

名を挙げると不意に肩が寒くなった気がして、綱吉がゆっくり振り返ると。

「今回からは毎回俺で良いだろう」

すごく綺麗な笑顔のプリーモと目が合った。

「なっ?!なな何言ってるんですかっ?そんなの無理ですよ!皆が良いって言わない!」

「他を黙らせれば良いか?」

「ちょっ…、プリーモどこ行くの?!」

そのままフワリと肩から離れたプリーモに嫌な予感がして止めようとするが、笑顔のままカウンターを指されてしまい。

「ほらデーチモ、8500を回ったぞ?」

「えっ?!あ…っ!」

と、一瞬目をそちらに向けて戻した次の瞬間にはもうご先祖は居なかった。彼の行動可能範囲がどれ程かなど知らない綱吉は油断したと青くなったものの、もう一度カウンターを見て、守護者達の部屋の方を見て、カウンターを見て、結局お客様を優先して扉を開けたのだった。

「Grazie8500!リクエスト出来ますよ」

少しぎこちない笑顔の綱吉の言葉に混じって、幾つかの叫び声が聞こえたのは気のせいだと信じたい。





8888





「デーチモどこへ行く。キリ番とやらか?」

「そうですよ…ってまたプリーモ!」

「またとは何だ、不満か」

「…い、いえ(笑顔が怖い)」

「お前の嵐の代わりに来た」

「(獄寺くんごめん!)」

「今度は俺も一緒に迎えるぞ」

「あ、はい」

「何番だ?」

「8888番です」

「ほう、縁起が良いな」

「そう思いますか?」

「ああ。八は末広がりだからな」

「はい!やっぱり日本に詳しいんですね!」

「好きだからな」

「!」ボフン

「?どうした?」

「い、いえ…(つい照れてしまった)」

「顔が赤いぞデーチモ」コツン

「…!!(ち、近い!)」カアッ

「なんでもないですー!ほ、ほらカウンターが8888ですよ!」

「来たか」スッ

「い、いきますよ(ビックリした…)」ドキドキ


ギィ、

「「Grazie8888!!」」

「リクエスト出来ます!」





9000





「綱吉、エントランスに行くよ」

「え、ヒバリさん?」

「早く」

「あ、はい」

スタスタ

「あの、プリーモは…?」

「六道骸を相手してる」

「大丈夫かなぁ骸…」

「殺しても死なないでしょ」

「…確かにそうですけど…」

「綱吉」

「はい?」

「君は僕の事だけ考えてれば良い」

「…!!」カァーッ

「ほらキリ番だよ」

「は、はい」ドキドキ


ギィ、

「「Grazie9000!!」」

「り、リクエスト出来ます!」

「…何動揺してるのさ」

「んなっ!し、してないです!…えと、良かったら足跡残して下さいね!」

「(してるくせに)…伝えたよ」




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