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ヒバリさんは、ずるい。

「綱吉」

廊下を歩いていると後ろから呼び止められた。この低く鋭い声はヒバリさん。振り返ると案の定、そこに居たのは学ランに風紀の腕章を付けた彼だった。

「…なんですか?」

「君ね、」

何かを言いかけて、口をつぐむヒバリさんは何故か不機嫌そうだ。俺怒らせるようなことしたかな?

「どうしたんですか?俺、何かしました?」

首を傾げるとため息をつかれた。

「それは僕のセリフだよ。…なんで避けるんだい」

「……避けてません」

「じゃあなんで逃げようとしてるのさ」

一歩ずつ近付いて来るヒバリさんに、俺は無意識で体を後退させていたようで。気が付いて思わずうっと唸った。

「ひ、ヒバリさんは…」

「何」

「……俺のことなんて咬み殺す対象にしか思ってないんですよね」

「…は?」

何それ、とヒバリさんは眉を寄せてまた一歩俺に近付く。

「だって、いつもヒバリさんから来てくれるか呼び出されないと、会えない」

「…綱吉」

同じだけじりじりと後退しつつ、制止する声を無視して俺は気持ちをぶつける。

「俺が行ったって居ないですもん」

「綱吉」

…あ、もう後ろ壁だ。

「それって自分が用のある時だけ会えれば良いってことで…」

「こら」

ムニュ。
まだ途中だった言葉はヒバリさんに両頬を押し潰されることによって強制的に終了した。
ヒドイ、せっかく人が頑張って話してるのに。

「…はひするんへすか」

「無視するからでしょ」

じと、と睨むと、呆れ顔の後わざとらしく一つため息を吐いたヒバリさんが、急に真剣な目で俺を見る。

「……何を勘違いしてるのか知らないけど、勝手に決め付けないでくれる」

「 」

でも、と反論しかけたその言葉は俺の口を塞いだヒバリさんの口内に吸い込まれた。

「そんなに言うなら、君が呼べば良いじゃない」

「………!」

ヒバリさんは、ずるい。
簡単に掴ませないくせに、俺のことは丸々覆ってしまう。

「僕は君の雲だからね」

あやすようにそう言ったヒバリさんの笑顔に見とれた俺が周りの視線に気が付くのは、それからきっかり5秒後のこと。







end*

ヒバリさんって中々捕まらなそうですよね。




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あきゅろす。
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