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白綱 4/8
時々不思議に思う事がある。
果たして彼は、何故俺を捕らえておくのだろうか。
「何考えてるの?」
「…別に」
「ふぅん。まぁ良いや」
いつもの様にふ、と嘘臭く笑った彼がソファから立つと俺の方に近付いて来る。常に視界にある白をこれ以上見たくなくて目を閉じると、目の前で立ち止まった気配。
「綱チャン?」
「………」
答えてしまえば目を開けなければならない気がして無言を返した。すると困ったなぁ、と全く困惑した様子でない声がぽつりと呟かれて、フワリと抱きしめられる。いや、抱きしめられるというよりは包まれているという感じか、とにかく優しかった。そのせいで余計言葉に詰まる。
「ねぇ」
耳元で甘い甘い声音。酔いそうだ。
「僕の事を考えてくれてるんでしょ?」
ビクリ。言葉の後に笑った吐息が耳を刺激して、勝手に体が震えてしまう。これでは、図星みたいじゃないか。
「照れ屋さんだなあ」
ふ、と今度は離れて。読めない動作に、スルリと遠退く腕が寂しいと思ってしまった。
「――愛してるよ?」
「!」
唐突な告白に思わず閉じていた目を開けてしまって、でもすぐ大きな手の平で覆われて。
「こうやって視界を隠したって、僕からは逃れられないんだからさ、全部認めちゃえば楽なのに…ね」
「びゃくら……、」
ようやく口にした名は、冷えた唇に覆われた。
…果たして俺は、何故逃げ出さないのか。答えはどちらも白の中。
end*
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