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骸綱←山 3/27
空が暗い。じき雨が降るだろう。
「雨、か」
教室の窓からぼうっと空を見上げて呟いた。
「どうしたの?山本」
すると隣に同じ様に顔を出して、ツナがこちらを見てくるので笑顔で返す。
「いや、傘持ってきてねぇなと思って」
「そうなの?良かったら俺の置き傘貸すよ?」
「良いのか?」
俺に貸せばツナが傘ないんじゃ?と聞けば、大丈夫とツナは笑う。
「骸が来てるみたいだから」
ズキリ。
校門に向けられたその目線を辿ると、パイナップルヘアーの奴がそこに居た。ツナは骸と付き合っている。
「……あー、いいや。部室に置いてたの思い出したのな」
「そう?」
「ああ」
嘘だ。本当は傘なんて置いてない。でもツナに借りればツナがアイツと相合い傘する事になる。それだけは見たくない。
「じゃあ山本、またね!」
「…じゃあな!」
笑顔で手を振るツナを、引き止められたらどれだけ良いか。アイツなんかより俺を選べって、そう言えたらどれだけ楽か。でもそんな事すればどうなるかなんて俺だって分かる。ツナが泣くところなんて俺は見たくない。だから、もしもアイツがツナを泣かせたら、その時は。
「…ちくしょー。断った意味ねぇじゃん」
雨がぱらつき出した窓の外、見たくないツナとアイツの相合い傘が咲いていた。
end*
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