暗い暗い水底に沈む様な意識は一つの光に手繰り寄せられた。
「骸、おはよ」
瞼を押し上げると視界に飛び込んで来るハニーブラウン。それに安堵の息を吐いて、お早うございます、と返す。
「夢見てた?」
「…何故?」
「悲しい顔してたから」
言葉に出ていなかった事に胸を撫で下ろしつつ、気取られた事には苦笑。すると彼は小首を傾げる。
「違った?」
「いいえ、確かに夢は見ていました」
「…怖い夢?」
「そんな事はありませんよ」
あまりにも心配している様なので微笑んで見せると、安心したのかフニャリと笑って抱き着いてきた。
その腕の温かさに一瞬困惑して、彼より強く抱きしめ返す。
「綱吉君」
「なに?」
…怖くなどはない。ただ、泣きたくなる程に哀しい夢。
いつか現実になるのならば、それまではこの光を、抱きしめて。可能ならばその瞬間さえ感じていたい。
「…何でもありません」
――それでも君は、近くて、遠い。
end*
「消えない願い」のイメージです。あくまでも私個人の勝手なイメージですよ。