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SS
500-2500


500


――明らかに通常とは異なる場の空気に男は一瞬たじろいだ。

「これは……キリ番じゃないか!」

その原因に気付いた男は続いて慌てふためき、

「あ…新しいサイトの初キリ番コメントが俺で良いのかな…」

謙遜しだした。実際のところ現場は『ツナ総受け至上主義』と謳っているわけで、彼がその『ツナ』であるから選出に間違いはないのだが。

「ああ、そうだ。リクエスト、リクエスト出来ること伝えなきゃ」

彼が何故ここまで動揺しているのかは不明であるが……

「500ありがとう!リクエ……、!」
「遅ぇ」

ゲシッ、ドシャ!

その余りのまごつき具合に痺れを切らした家庭教師が制裁に来るなど予測出来た事なので、小さな体躯からは想像できない威力で蹴飛ばされ哀れに転がる彼を見ると残念でならない。

「Grazie500.リクエスト出来るぞ」










555




ずてん!

派手な音がしてハニーブラウンが地面に突っ伏した。転んだらしい。

「…何をやっているのです、君は」

歩を止めて呆れ気味に声を掛けると、彼は鼻を押さえながらのそりと起き上がる。

「いたた。…なんか引っ掛かったんだよ」

「ちゃんと足元を見ていないからそうなるんです。ほら、サイト内の巡回を買って出たのは君なんですから、早く済まさなければ雲雀君にどやされますよ」

雲雀恭弥の名を出せば慌ててついて来るだろうと思い踵を返すが、直ぐに綱吉君に呼び止められた。

「ま、待って骸!これ!」

恐らく彼が指差すそれが足を引っ掛けた物の正体なのだろう。そんなものわざわざ見せなくても良いというのに。

「なんですか……って、おや」

これは予想外だ。

「キリ番、でしたか」

「な、な!555番!踏んでくれた人が来てるんだよ!」

興奮しているのか僕の回りを忙しなくクルクル回る彼に一つ笑みを零して、頷く。

「ではお礼を言いましょうか」

「うん!せーの、」

「「Grazie 555 contare!!」」

「リクエストが出来ますよ」





590

消失





696




暗闇をさ迷っていると、カツン、と前方から靴音が響いた。
同じ距離から仄かな明かりが伸びて来て綱吉を照らそうとする。

「…おや」

「…骸?」

柔らかな明るさに僅かに目を細めて、それを差し出す人物の名前を呼ぶと同じ様に「綱吉君」と名が返ってくる。

「どうしました?こんな時間に」

「外に出るべきだと思って。何となくなんだけど」

「超直感ですか」

「多分」

頷くと、ふむ、と一瞬考える素振りを見せてから骸は笑った。

「…きっとあれです」

「え?」

徐に長い指が持ち上がって空間を指すので目で追いかけると、サイトのエントランスに備え付けてあるカウンターが696を表示していて得心がいった。

「696…骸のキリ番だね」

「ええ。だから僕も呼ばれた訳ですか」

クフフ、と笑って骸は恭しく扉に向かってお辞儀をするので、慌てて綱吉もそれに倣う。

「ようこそいらっしゃいました、そして」

「キリ番ありがとうございますっ」

「リクエストが出来ますので宜しければご報告下さい」





777

消失





800




コンコン

綱吉が自室で寛いでいると、誰かが扉をノックした。

「ツナ?ちょっと良いか?」

山本だ。

「山本?どうしたの?」

扉を開けると顔を出した山本が正装している事に気付く。

「…あ、もしかして」

「ん、キリ番なのな」

答えを聞いて慌てて綱吉もスーツに着替えると、二人連れ立ってエントランスへ向かう。

「山本って事は800番?」

「ああ。早ぇよな、ちょっと驚いたぜ」

ニカッと笑って言う山本に同意して、綱吉も頷いた。
エントランスに着くとそれぞれ両側のドアノブに手をかける。800番目の訪問者を笑顔で出迎えた。

「「Grazie800!」」

「リクエスト出来るのな」





1000




バタバタと、慌ただしく駆け回る足音が響く。

「十代目、アホ牛はどうしますか?」

「ハル達に任せてる!」

「ツナ、こっちは準備出来たのな」

「先並んでてくれる?お兄さんもお願いします」

「極限に了解したぞ!」

「あー!骸!悪いけどそろそろ雲雀さん呼んできて!くれぐれも戦闘は避けるようにな!」

「おやおや…了解しました」

「ツナ〜ランボさんも来てやったぞ」

「アホ牛てめっ、すんません十代目!」

「んーもうちょっと後でも良かったんだけどな。良いや獄寺君一緒に並んでてくれる?」

「分かりました」

サイト訪問者数1000番目を祝う為、ボンゴレの十代目と守護者達が一様にスーツに身を包み、エントランスへと集まって来ていた。

「沢田ー!ところでこれは何の集まりなんだ?!」

「お兄さん知らずに参加してたんですか?!」

「おめでたい事が起きるのな。だから、おめでとうな集まりです先輩」

「そうなのか!極限めでたいのだな!」

「おめでたい事は分かって貰えたみたいだね。ありがとう山本」

「ん。ところで雲雀達遅くないか?」

「!本当だ。もうすぐキリ番来ちゃうよー!まさか闘ってたりはしないよね…」

「随分信用ありませんね僕達も」

「一緒にしないでくれる?」

「骸!雲雀さん!良かった間に合った」

「…綱吉。呼ぶなら君が来るように言ったよね」

「う゛…すみません。でも時間がなかったんです」

「十代目はメインとしてお忙しい身なんだ!わざわざお手を煩わすんじゃねぇ」

「煩いよ君」

「んだと?」

「まあまあ落ち着けって」

「そうですよ。我らが大空の瞳がオレンジになる前に、ね」

「「!!」」

骸の一言で騒がしかったエントランスが静寂に包まれた。

「賢明な判断だよ。もうすぐ1000のお客様がいらっしゃるからね」

色が変わり始めた瞳を僅かに細めて、綱吉はカウンターを見上げる。…いや、雰囲気からしてもう既にハイパー化はしている様だ。

「やっと集まりやがったか」

危なかったと胸を撫で下ろした守護者達が綱吉に倣ってカウンターを見上げた時、赤ん坊ながら綱吉の家庭教師であるリボーンがどこからか現れた。

「リボーン!どこに居たんだ?」

「ちょっとな。準備してたんだぞ」

「準備?」

綱吉が言葉を反復すると、リボーンはニッとニヒルな笑みを浮かべて徐に十年バズーカを取り出す。その弾はまずはランボに。

「…ぐぴゃ!」

そしてリボーン自らに放たれた。

ボフン!!

爆音と共に煙が舞い、晴れたそこから現れた二人はピシリとスーツに身を包んでいる。恐らく先に言っていたリボーンの準備とはこの事だろう。

「チャオッス」

「やれやれ」

「……これで集まった。来るぞ」

二人が列に加わると、綱吉の言葉に合わせる様にカウンターが1000を表示し、扉が開いた―――

『Grazie1000!!!!!』





1500





コンコン

「ツナ居っか?」

自室でうたた寝をしていた綱吉は、ノックと明るい呼び声で目を覚ました。

「…ふぁーい」

眠い目を擦りながら返事をしてベッドから起き上がると、扉へ向かう。

「誰…?」

ガチャ

「よっ!寝起きか?」

「ディーノさん!」

開けた扉からキラキラした金髪が覗いて、ディーノが姿を見せた。寝起きには眩しい笑顔付きだ。

「ど、どうしたんですか?出番ありましたっけ?」

突然の来訪に困惑しつつ尋ねると、ディーノはズイッと長身を乗り出してきた。

「ねぇんだよ。だから、こっちから来てやった」

ニカッと人懐っこい王子スマイルを浮かべられると、綱吉はそうなんですかと気の利かない返事しか出来ない。元々この兄弟子には憧れを持っているから、顔を見れた事は嬉しいのだ。反論する必要もなかった。

「あ、そうそう。カウンターが1499だったぜ?もうじき1500来るんじゃねぇか?」

ふとディーノが思い出した様に言うものだから、綱吉はえっ!とビックリ声を上げてから慌てだす。キリ番のお客様を出迎える役目があるからだ。

「き、着替えなきゃ!」

「一緒に行こうか?待ってるぜ」

「本当ですか?ディーノさんが一緒だときっとお客さんも喜んでくれます!」

「そっか?」

言葉を交わしながらも手慣れたもので、綱吉はスルスルと順序良くスーツに着替えていった。最後にディーノに確認を頼む。

「馬子にも衣装だな」

「んな!?ど、どういう意味ですかっ?」

「ハハ。冗談だよ。似合ってるぜ」

「あ…ありがとうございます。さ、行きましょう!」

なんか調子狂うなーなどと思いながらも二人並んでエントランスへ向かった。

着いてみると既にカウンターは1500を表示しており、二人は慌ててドアを開けたのだった。

「「Grazie1500!!」」





2000消失





2222





ふ、と意識が浮上した。
目を開けると見慣れぬ天井にパチクリと瞬きを繰り返し、上体を起こしてみる。伸びた髪がサラリと音を立てた。と、

「チャオ」

「…チャオ」

起き上がった事でその視界に映った見慣れた少年に、とりあえず同じ様に挨拶を返してから疑問を投げ掛ける。

「ここどこ?リボーン」

「十年前だぞ」

すると簡単な答えをくれた上で手を取られ、引かれてベッドから立たされた。そのまま適当に身なりを整えられて、また手を引かれどこかへ歩き出す。

「ちょ、どこ行くの」

「説明してる時間がねぇ。着いたら分かんだろ」

リボーンの勝手は今に始まった事じゃないので深く考えず頷いて、欠伸をしながら着いて行く。しかし俺より小さいのになんでこんなに歩くの速いんだ。あ、足の長さが違うのか。

「おら着いたぞ。…ギリだな」

立ち止まって呟いたリボーンの横からひょっこり顔を出すと、何だか覚えのある風景。

「ん?お、あ。エントランス……もしかしてサイトのキリ番?」

「そうだぞ」

なるほど、と頷いてみせて、スルリと横を通り抜けてリボーンより先に扉の取っ手を掴んだ。すぐにリボーンが続いたのを確認して、左右同時に引いた。

「Grazie2222!!」

「リクエスト出来るぞ」

「良かったら足跡残してね!」





2500





嵐は突然来る。

「綱チャン〜♪」

バタン、といきなり扉が開いたと思うと歓迎しない客が来た。黒のシャツに白のスラックス、白のベストを着、片手に白のジャケットを持ったこれまた白い髪の男、白蘭。丁度2500番目のお客様を出迎える為にエントランスに出ていた綱吉と骸は、同時に顔を引き攣らせた。

「「げ」」

思わず出てしまった声に骸はコホン、と咳ばらいを一つし、さり気なく綱吉を背に庇う。

「何でしょう白蘭」

「骸君も居たんだ。二人でお出迎えなんて嬉しいな」

「違います。貴方ではなくお客様を迎える為です」

その口調は暗に白蘭は客ではないと言っていたが、動じた風もなく白蘭は人懐っこい様な嘘臭い笑みを浮かべる。

「僕もお客さんを出迎えに来たんだよー?」

「な…」

「うそ?!」

「ホント」

思わず骸の後ろから声を上げた綱吉に嬉しそうに返して、白蘭は笑みを濃くした。

「だって、僕最近出番多いし。SSで久しぶりに綱チャンと絡めたからね」

「まぁそうだけど…」

「たった3回の絡みでレギュラーを気取らないで頂きたい」

絆されそうな綱吉を遮り、刺々しく鼻で笑う骸。

「そう言わないでよ。僕と骸君の仲じゃない?」

「黙りなさい」

それに笑顔のまま返す白蘭の言葉に骸は一瞬顔を赤くしてから、殺気を放った。驚いた綱吉がギュッと骸の服の裾を握る。

「大丈夫ですよ。綱吉君には近付けませんから」

「骸…」

「僕も混ぜてー♪」

「「お断りだ!」です!」

じゃれ合う三人が扉の向こうで入館のタイミングを逃してしまったお客様に気付くのはいつだろうか…。








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