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昼休み。雲雀が応接室で三学期のスケジュールを確認していると、ドアの磨りガラスに人影が映った。特徴的な頭のシルエットですぐに誰だか分かり入室を待っていると、その影が小さく下を向く。
「くしゅんっ!……ヒバリさん、失礼します」
子供らしいくしゃみを一つしてから入室して来た影の正体、綱吉を見て、雲雀は少し驚いた。
「…何でシャツだけなのさ」
小学生じゃあるまいし、真冬の1月にその薄着はない。特に綱吉は休み時間に走り回って汗をかくようなアウトドアな性格ではなく、むしろ教室で机に突っ伏して寝るとか友達と話すとか、インドア派な人間なのだ。
「あの、廊下を歩いてたら水道場で遊んでた奴に水かけられちゃって…」
被害者だと言うのに申し訳なさそうに話す綱吉に、雲雀の吊り上がった眉が更に吊り上がる。
「誰だいそいつは?」
「あ!えっと、覚えてないです…」
普段から咬み殺すが口癖の雲雀の事だ、今回もそうなるだろうと思ったのか綱吉は白を切る。ただし目が泳いでいて嘘をついている事は丸分かり。
その様子に雲雀の口からため息が洩れた。綱吉本人から犯人を聞くのは諦めたのだろう、専用のデスクからおいでと手招きする。
「お、怒ってますか?」
彼の不機嫌を感じ取ってびくびく怯えながらも綱吉が側に寄ると、おもむろに自分が肩に羽織っていた学ランをその小さな肩に掛けた。
「ヒバリさん?」
「……怒るわけないでしょ。良いからそれ着てなよ」
「でも、ヒバリさんが」
「君とは体の作りが違うから。それに、人の好意は素直に受け取るべきなんじゃない?」
クスリ、と弧を描いた唇に安心したように、綱吉はギュッと自分には大きい学ランを握った。
「ヒバリさんの体温が残ってる…あったかい」
「そう?」
「はい!ヒバリさん、ありがとう」
「うん」
その笑顔に雲雀の心が温まったなんてことは、秘密。
(僕も随分甘くなったもんだ)
end*
ツッ君は心の湯たんぽ(笑)
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