SS
ランツナ 1/29
コンコン、と控え目なノックを送る。
「どうぞ」
凛とした声に迎えられて静かに扉を開く。
「…ボンゴレ」
「ああ、ランボ。お疲れ様」
部屋の主を呼べば、書類に向けた目をそのままに、表情だけを和らげて労いの言葉を掛けられた。
それに頷く事で答え、彼に与えられた任務によって出来た新たな書類を差し出す。
「報告書を」
「ん、ちょっと待って……はい」
目を通していた書類に何か書き込んでから、俺の出したそれを受け取って文字を目で追って行く。その様子をぼんやり見ていると、唐突に彼が口許を弛めたので不思議に思って訊ねた。
「何か間違いでもありましたか?」
「いや。ランボの報告書はいつも丁寧で見易いな、と思って。損害も殆どない」
「それは…皆さんとは任務のレベルが違うからですよ」
事実、俺は他の守護者より幼い、と言う理由でいつも比較的容易な任務を割り当てられていた。他の守護者(特に霧の彼と雲の彼)なんて、いつも死と隣り合わせなハードなものだと言うのに、俺はまだ死を感じる程の身の危険は任務では覚えた事がない。
仕方がないか俺は弱いから、と自嘲した所でボンゴレがくるりとこちらを向いた。
「本当にそうかな?」
その言葉に一瞬ドキリとしたが、彼は笑顔だったのでとりあえず無言で頷く。
「…ランボはさ、気遣いが出来る子だから。俺はそう思ってるよ」
誉められた事は素直に嬉しいが、子供扱いは頂けない。そう言う俺の表情に気づいた様で、ボンゴレは苦笑して付け足した。
「ごめん、子供扱い嫌だったね」
「いえ、実際子供ですから」
それでも10年前へ行くと14歳のボンゴレには"大人"と言われるのだから何とも皮肉だ。
そんな事を思っていると、同じ事を思ったのか彼がフフッと笑った。
「本当、時間の経過って不思議だよね。あのお騒がせランボがこんなになるんだもん」
「あなたも…ご立派になりましたよ」
「ありがとう」
綺麗に笑うこの人は、良くも悪くも本当に変わった。昔はダメツナ、なんて呼ばれてたのに今や権威あるボンゴレファミリーのボスだ。
さて、なら俺はどうだ?本当に変わったのだろうか?
「ランボは変わったよ。落ち着いて、気配り上手になったし…強くなった」
ボンゴレの言葉にハッとする。特に最後、強いと言う言葉は俺が一番欲しかったものだ。でも……
「いえ、俺は弱い。だから、もっと強くなります」
突然の俺の宣言に僅かに驚いた様子を見せたボンゴレが、ふふ、と柔らかく微笑む。
「じゃあ、そろそろ雲雀さんと同レベルの仕事を任せようかな?」
「…いきなりですか……」
その笑顔に思わず出かけた"俺が強くなりたいのは貴方を守りたいから"だと言う本音は、胸の内に押し込めた。
end*
私の中でランツナはランボの片想いのイメージがあるようです。
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