今日は始めに会った時から落ち着きがないな、とは思っていた。
あまり目を合わせようとはしないし、何かを隠してるような素振りを見せる。とにかく挙動が不審なのだ。
「む、骸!」
「はい?」
そんな彼に思わずため息が洩れたところで、意を決してという表現がピッタリの深刻な顔で綱吉君が僕を呼んだのでいよいよ悪い予感がした。
「あの…あの、さ」
「………」
非常に言いづらそうだ。そんな顔をされても困る。
「何ですか、言いたい事があるならばハッキリ…」
「はい!!」
段々苛立たしくなってきて投げやりに放った急かす言葉が、途中で切れた。開いたままの口が塞がらない。
彼が、可愛らしく包装された袋を差し出していた。
「…それは?」
ようやく頭が回りはじめると、まさか、という仮定が想像出来た。確か今日は。
「…今日、バレンタインデーだから、さ。それ、買うのすっごく恥ずかしかったんだからな!」
そう言って半ば睨むようにして見上げてきた彼の顔は、真っ赤に染まっていて。
…ああ、もう。何を勘違いしていたんだ僕は。
「綱吉君」
「ん?」
「僕が…貰っても?」
「当たり前だろ。お前の為に用意したんだから、貰ってくれなきゃ困……わきゃ?!」
堪らなくなって思わず彼を抱き寄せた。まさか、君からチョコを貰えるなんて。
「全く嬉しい誤算だ」
喜びを表現するのにぎゅうっと強く抱きしめると、苦しそうに身をよじる。その姿さえ愛おしくて頬に目尻に唇に、幾つものキスを落とした。
「むくろ喜び過ぎだよ」
「君から貰えたんです、これでは表現仕切れないぐらいだ」
本心をそのまま言うとえー、と返されてしまったけど、構わずキスの雨を降らせ続けた。
「ホワイトデー、期待していて下さいね」
「うん」
end*
ラブラブ*