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カーテンがユラユラと揺れる二階の窓へ、跳び移る。

「こんにちは、綱吉君」

顔を出すとベッドの前に座る部屋の主を確認して声を掛けたが、珍しく返事がない。不審に思って、靴を脱いでから勝手にお邪魔させてもらい近寄ってみる。

「綱吉く…おや」

俯いた顔を覗き込めばどうやら眠っているようだった。起こすのは悪いだろうと、そのままにして眠る彼を観察してみる。
安らかな寝顔、規則正しい寝息、思わず手を伸ばして髪を梳くと、彼がピクリと反応を示した。よくよく見ると、伏せられた瞼もチラチラと動きを見せている。
……これは、寝たふりですか。
理由は定かではありませんが、僕を欺こうとは面白い。少しだけ付き合ってあげましょうかね。

「眠っているのですね」

わざと白状しにくい言葉を掛け、嘆息してみる。すると唇が引き結ばれた。無意識だろう。

「眠っていても可愛らしい」

今度は褒めてみた。目に見えて顔が真っ赤になっていく様です。
笑い出したい衝動を何とか抑えて、好き好きに跳ねる髪の毛に指を差し入れて梳いた。ほんのり石鹸の香りが漂うのに、誘われる様に近付いてそっと耳打ちした。

「あんまり無防備だと食べちゃいますよ」

「…!!」

瞬間ビクリ、と彼の体が揺れて、僕は堪らず笑い声を漏らした。

「クフフフフ」

「っむくろ!」

するとこちらも観念した様に声を上げて真っ赤な顔を向けて来る。

「…おや。おはようございます、綱吉君」

「き、気付いてたくせに!」

「えぇ、まあ」

素直に頷くと、プゥッとフグの様に頬を膨らませた。どうやら照れと怒りを表現している様だ。…伝わって来ないけれど。
笑顔のままで観察されて気になったか、彼はすぐにパッと頬を戻してしまった。そして思い出した様に唸る。

「変な冗談、止めろよな」

それが僕の「食べちゃいますよ」と言う言葉に掛かっている事は分かったので、一瞬だけ笑顔を引っ込めた。

「冗談ではありませんが?」

「んなっ…」

困惑している彼に、ああ駄目だ、口元が緩む。

「…クフフ」

「?!む、骸!」

その日を後に、狸寝入りなんて事はしなくなってしまいましたが…こう言う可愛らしい悪戯なら、僕は大歓迎ですよ?綱吉君。
…ああ、ただ。食べてしまいたくなるのでご注意を。







End*

一応忠告したので、二度目はきっと食べられちゃいます(笑)




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