紡ぐ名前4





先生方に時間を頂いて、僕は1人長屋で目を閉じる。浮かぶのは、彼の事ばかりだ。

兵太夫、なあ、どう思う。
1年の最初は心の底から嫌っていた。今よりもっと泣き虫な僕をからかって、罠に掛けて。僕がは組を馬鹿にすると本気で怒って。けれど、いつだっただろうか、お使いの帰りに迷子になって泣く僕をこっそり迎えにきてくれた。結局2人して帰れなくなり、探しにきて下さった立花先輩にこってり叱られたっけ。
それでも繋いだ手は、離れなかった。
その事があったから、2年、3年の時はびっくりしてしまう位僕達は仲が良かった、と思う。お互い親友と呼べる友はいたから、悪友とでもいったところだろうか。
けれど、それも忘れてしまう位の大喧嘩をしたのも3年の時だった。理由は下らない事だったけれど、今思えば嫉妬とも言えないやきもちをお互いやいてしまっただけだったのだろう。殴り合って、怒鳴り合って、最後にその延長のような口付けをした。

それ以降口もきかなくなってしまった4年の夏、次に泣いたのは彼だった。
涙を拭って、抱き締めると暖かくて僕が泣きそうになったのを覚えている。ゆっくり口付けて、好きだよと小さく呟いた声も。
彼と気持ちが通じたのは、その時だ。
それから、大体1年か。未だにじわりと暑いが、もう秋がはじまる。沢山抱き合ったし、好きも言ったけれどこの気持ちを全て伝えられた気はまだしない。
僕は彼を置いて行くのだろうか。
ただでさえあと1年と少ししか居られないというのに。僕はあの子を置いて、出ていけるのだろうか。

答えは、まだ出ない。










あきゅろす。
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