紡ぐ名前3




初めてその実習について話を聞いた時、真っ先に浮かんだのは彼の事だった。
薄情な男だと自分を笑う。家族さえ級友さえ差し置いて、恋しい男を思う色狂い。僕は自分が嫌いだ。
長期に渡るその仕事に、まだ勉強中である僕達が就く事は滅多にないらしい。貴重な一年を潰してまでその実習に学ぶ事があるかどうか、しっかりと見極めて返事をしなさいと言われた。今回に限り、否の返事も認めようと。


「ただ、わかっているかとは思うが、実習に就くかどうかはさておき絶対にこの件、口外しないように」
「はい」


先生方の顔も、学園長先生の顔も、心なしか強ばっていた様に見えた。分かりやすく危険が伴う仕事では無い。けれど、本来ならまだ安全な学園内で守られるべき子供が行く仕事でも、無い。
友人達を騙し、行方を眩まして行われるそれは、成る程確かに嫌な仕事だと思った。










あきゅろす。
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