紡ぐ名前1






薄い唇が開いて僕の名前を呼ぶ、声変わりを終えて少し低くなった響きが僕を操る。
伝七、愛しているよ。君を愛しているよ。
嘘つき、嘘つき。
何時からだったか、僕達は恋人同士だ。手を伸ばし頬に触れて愛を囁く恋人。
兵太夫は僕に存分に愛情を注いだし、何よりも大切にした。それはもう、家族より級友より。
僕はといえばそれに何にも思わない。兵太夫が僕を一番に置くのは当たり前の事で、人としての責任であるし(この責任が何を指すのかは僕は知らない、彼が自分で言っていたのを覚えているだけだ) 、同時に僕にも兵太夫以上に大切な物など生まれた時より存在しないからだ。
彼の友人には、僕は嫌われている。あからさまに嫌悪を示す目もあれば痛ましげに歪んだ目もあった。だからといって何をされるというわけではないが、もうやめろやめてくれと頼み込まれた事はあった。勿論僕に決定権はなく返事すらしなかったけれど。
僕を生かすのも殺すのも、兵太夫だけが決める事である。











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