落ちる

・綱海さんの音楽事情







音楽は好きだ。
幼なじみが超がつく程の音楽野郎だっていうのも関係あるかもしれないけれど、小さい時から音楽が好きだった。
余り激しいのじゃない。海の底を揺らすようなゆったりと深い、横揺れの低音が一番心地いい。
音村には悪いけど、ヘッドホンも余り得意じゃない。狭い部屋に響くのが好きだ。空気が音に染まって色を変えるのが見える気がするから。

「綱海、」
「うん」


音村の部屋は、いつだってカラフルだ。
太陽を遮って音で染めると、そこはもう海の底。俺は上手く泳げずに溺れていく。肺にも胃にも手足にも、ゆっくりゆっくりと染み込んで俺は海に溶ける。こわかった事、嫌な自分、全部が無くなって。
そうして音楽が途切れたら、またゆっくりと形を取り戻していく。

俺の横で目を閉じる音村が何度か何か言った気がしたけれど、俺は生返事を返すだけだ。
今は、俺は海なんですよ。
もうちょっとお待ちくださいね。

俺が形を取り戻すまで。








/きゃらばんはとっても綱海さんに合うなって、




あきゅろす。
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