さよならの準備


付き合ってる南拓









控えめに絡められた指の先が、かわいいと思った。

神童は頭も良ければ顔も性格も良い完璧な奴だけど、やっぱりまだ子供だ。
それは俺も同じなんだろうが、神童はなんていうかそれが顕著な気がする。
駆け引きなんて知りませんって顔で、いつもいつも俺が隠したい事を引きずりだして、これ、なんですか?って。
それはいつも俺を惨めなみすぼらしい気持ちにさせるから嫌で嫌で仕方ない。
そのくせ、そんな残酷な事しながら神童はちっちゃな声で言う。


南沢さん、すきです、って。


おっきな目に涙溜めてちょっとだけかすれた声で言われるだいすきは切なくて甘ったるい。

「…南沢さん、」

言わないでくれよ。
お前のその目が嫌いなのに、何も言えなくなってしまう。

「南沢さん、先輩、あの、サッカー…好きですか」


嫌いだよ。
お前もサッカーも、



嘘、多分どっちも。



ごめんな、さえも言えないで俺は曖昧に笑うだけだ。
代わりに少しだけ絡めた指先に力を込めた。多分終わる時はもうすぐそこで、その時俺はなんにも無かったみたいな顔してサッカーだっ

てお前にだって未練はありませんみたいな顔して背を向けるんだろう。
それできっとお前は笑うんだ。
さよなら先輩、ありがとうって。

容易に想像出来るその未来が悔しくないと言ったら嘘になるけれど、やっぱり俺には何も出来ないんだ。
でもそれはお前も一緒なんだろうな。



せめてごめん、許して、だけは言わないように。
さよならの準備をしよう。







/ひょっとしたらこの設定で続くかも



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