紡ぐ名前5




現実を、見る覚悟がない。
僕にとって大切な物は年々増えて、その中に確かに伝七の姿があった。喧嘩ばかりしていたあいつが愛しく思えだしたのはいつからだったのだろう。昔からあまのじゃくだった僕の事だ、それが出会ったその瞬間だったとしてもおかしくはない。

暗い洞窟の中を灯りもなく、何にもぶつからないように走るみたいな、忍という生き方を選んだのは僕達自身で、それはしっかりと理解していた筈だった。僕も、彼も。
だからわかってはいるんだ。僕はただ大切な人を失った事を認めたくなくて狂人のふりをしているだけだ。ただ、何も見たくなくて。
誰の責任でもない、この世界を見たくなくて。
抱き締めた腕に力をいれた。






(紡ぎたい名前)







あきゅろす。
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