午後4時の攻防

・年齢操作風丸とヒロト
・ヒロトと女の子に関する話
・仲良いのか悪いのか
・気持ち的には風ヒロ








基山ヒロトという人間は、実に面倒でうざったい。その本質を柔らかい表情で覆い隠してしまう所までが彼という個人だと、風丸は思っている。
急に呼び出したかと思えば待ち合わせの喫茶店でアイスコーヒー片手に女に振られたからとメソメソするこの赤毛が、数年前に日本中を騒がせたあの宇宙人だと誰が信じるだろう。ふざけたコスチュームで、ふざけた言動で、それでも破壊だけはやけに本格的だった。怪我人だって出た。被害額も計り知れない。
なのに時間が全てを流して、基山ヒロトはこうして普通の人間の様に恋愛をするフリさえしている。
それはやけに滑稽に見えた。正しく宇宙人が、人間に擬態している様にぎこちない。

「風丸君、聞いてないだろ」
「聞いてないね」


実際はそれなりには聞いていた。可愛くて優しくて胸の大きな女の子だったか。クラブサンドを噛る風丸をじとりと睨むのに即答出来たのが聞いていた証拠ではあるが、聞きたくなかったのには変わりないのでこの場合は聞いてない、で正しいだろう。

「いつまでたっても俺には冷たいよね、君」
「…じゃあ何で呼ぶんだよ」


あれから何年もたっている。2人は高校に進学し、大学生にもなった。当たり前のようにバラバラな道を選んでいる。
今日だって、本当に久しぶりだった。その内容が『振られたから慰めて』だというのには未だに納得できないけれど。


「本当はね、近くで見たかったんだ。守がさ、風丸が髪切ったぞーって言ってたから」
「…ふうん」
「あんなに綺麗な髪、見たことなかったから。透き通るみたいな色で、しなやかで…だから勿体ないなって思ったんだ」


それだけ、とへにゃりと笑う。
やっぱりこの男はわからない。風丸の髪型が見たいが為にこんな所に呼び出したのか。知ってか、それとも知らずか。


「俺の髪型見たいが為に女に振られたのか」
「面白い事言うね」
「ちがうの」
「どうでしょう」


その為だけだとしたら、ちょっと勿体ないと思わない?
だって可愛くて優しくて、おっぱい大きかったんだよ。


「…やっぱお前、宇宙人だな」
「…君こそ、こんな事の為にあんな綺麗なもの捨てちゃう癖に」
「なんの話だよ」
「さあね」


勿体ないのはどっちだろうねと、全て見通しているようにヒロトは笑う。
面倒でうざったい男は、自分も同じだ。それを知っているのは、風丸だけだった筈なのに。
2人は同じようにどうしようもない。
溶け切った氷がからりと割れて、知らず、2人は同じように笑っていた。







/つまりはまあそういう事



あきゅろす。
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