ログいろいろ
いざしず売春1

売春モノとして書いてたやつ。
詰んだのでお蔵入りしておりました。
幽が静雄さんのお兄さん設定です。










「いい子だね、足開いてみようか」


夢だと思いたかった。兄の事も、この広いベッドも、目の前で笑う男も。
いっそ、俺が生きている事さえ全部、夢であって欲しかった。







君のお兄さんがね、困っているみたいなんだ。
学校の帰り道、静雄にそう声をかけてきたのは全身を真っ黒な服で包んだ若い男だった。

「誰だよ」
「君のお兄さん、羽島幽平だよね?」
「はあ?なんで俺の兄貴がアイドルなんだよ意味わかんねえ」

…ウソをつくのには慣れていた。
最近アイドルとして名前が売れてきている兄に、こんな化け物みたいな弟が居るとばれたらきっと人気が落ちてしまう。
だから静雄はそれを隠して生活していた。誰にもバレた事なんかなかったのに。


「なんでばれたんだって顔してる。けど安心して?俺は誰にも言うつもりはないよ。けどね…ちょっと君のお兄さん、困ったことになってるんだ…君には心配かけたくないだろうから彼は黙っているつもりなんだろうけど。そういうのはダメだよね?2人だけの兄弟なんだ。お互いに助け合わないといけないよね?」
「な、にを」


男が静雄の肩を抱く。頭一つ分低い静雄の耳元に唇を寄せて、男は囁いた。





「君のその力のせいで、お兄さんは借金に苦しんでるんだよ?」






男の言葉は静雄の心に深く根を張った
男は別れ際、静雄に連絡先を教えた。優しげな目を、薄く細めて。





静雄が喧嘩をする度に兄の借金が増えていく。静雄に黙ってその借金を返済するためにやりたくもないアイドルもやっている。
かわいそうなお兄さん。
男はそう言った。
けど、君もかわいそうだね。
大切にされてるんだねえ、でもお兄さんはずっと君にとらわれて生きていくんだねえ。
君さえ借金を払えれば、お兄さんの苦労もちょっとはましになるんだろうけど…君はまだ中学生だ。
お金なんて、はらえないよねえ。


兄が帰らない部屋の中、静雄はひとりでじっと、男の連絡先を睨みつけていた。
いつでも連絡して、俺は君の味方だから。


その言葉が薄っぺらい事はわかっていたけれど。
それでも静雄にはその方法しかないように思えていた。












「やあ、来てくれたね」
「俺、相談があって…」
「ああ、わかってるよ。さあ入って」

新宿にある男の部屋は驚くほど広く、そして生活感がない。
雑誌に載っているモデルルームをそのまま移動してきたような居心地の悪い空間だ。
男に導かれるままその部屋に入り、出されたマグカップを受け取った。
ソファーに静雄が座るのを見届けて、男も隣に腰掛ける。その距離の近さにたじろぎながら静雄は切り出した。

「…金を稼ぎたい、んです」
「うん」
「なにか、方法が」


そうだね、男は静雄の頭を撫でた。

「君は…どんな事をしてでもお金が欲しいの?」
「…うん」
「そっか、なら俺がお金をあげる」

髪を梳いていた指がそのまま静雄の頬を滑る。唇を指先で擽られ、思わず払いのけた。

「な、にすんだよ!」
「あれ、なんでそんなこと言うの?」
「なんでって…アンタが気持ち悪い事すっから…」
「臨也でいいよ。おかしいな、俺は君に金の工面をするって言ったはずなんだけど」

まだ片手で持ったままだったマグカップを取り上げて、男は――臨也はそれをガラステーブルの前に置いた。
ゆるく両手を捕えられる。
静雄の力をもってすれば、簡単に振りほどける力だ。
けれど、そうは出来なかった。臨也もそれがわかっているのだろう。
長い指が静雄の掌、手首、肘から順番になぞる。







「さあ、どうする?どうしたい?羽島幽平の弟の、平和島静雄くん?」






とらわれた、瞬間だった。



/なんぞこれ



あきゅろす。
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