折原臨也が幸せそうで


世の中にはたくさんの『きまり』がある。
人を殺してはいけません、汝の隣人を愛しなさい、などといった全人類の決まり。
左側通行が基本、あと家には靴を脱いで上がる事、みたいな日本人的な決まり。

あと、押すなよ、押すなよ?と言われたら押す。これも一つのマナーと言っても良い『きまり』だ。(これもまあ日本人特有だけど)
おーまーえーはー?って言われたらあーほーかー!って返す。コレ常識。



つまりなにが言いたいのかって言うと、だ。



一人の男と一人の男が神社の階段の上から下まで転がり落ちた。




そうしたらもう、結果は決まってるだろう?基本は男女だろJKとか言わないでくれそこはイレギュラーだ。





「…シズ、ちゃん?」
「いざや…?」




入れ替わるのが、『きまり』なのだ。





一番最初に思ったのは、「あ、俺の声高いんだな」だった。
録音した自分の声を聞いたときに起こるのと同じ現象だね。目の前で、俺が痛そうに顔を歪めていてえだのうぜえだの言ってる訳だ。い

やあ流石にこの俺でもびっくりしたよ。
階段から転がり落ちたと思ったらまさかの俺がお前でお前が俺で。
俺が静雄でお前が臨也?俺がバーテン服でお前が情報屋?みたいな。
けどまあ、俺は驚くと同時に納得もしてた。
さっきの『きまり』の話だ。なるほどなんていうか、お約束だもの。元祖の奴は確か何日も戻らなかったけど、最近の展開だとお約束では一日寝たら治るはず。一生戻らないドラマもあったけどね。あの夫婦のやつ。
まあどっちにしろ俺はそれで納得した。いつか戻るだろ。

でも、まあ頭の固い君には無理だろうね。シズちゃん。




「い、いざやっコレなんだどういうことだ?」
「ちょっと落ち着けば?なんか飲む?っていうか身体大丈夫?」
「あ?」
「俺はまあいつもより頑丈になったわけだから痛みの類はほとんど感じないわけだけど、君は逆だろ。いつもの頑丈さがなくなってただの人間の身体になったわけだ。結構痛いんじゃない?」
「…いわれてみれば…ってかよくわかんねえ。なんで俺喋ったらお前の声になってんの。んでなんでお前が俺の格好して喋ってんの」

そこまで理解してるのになあ。残念。
そういえばシズちゃんってあんまりテレビとか見ない人だっけ?例があれば説明しやすいんだけどなあ。
階段を2人で落ちました。僕と君は入れ替わりました。って。

あうあう言ってるシズちゃん(見た目は俺だからなんか変な感じだね、確かに。つかまぬけ!)を引っ張り起こしてとりあえず立ち上がる。あんまり人に見られて良い状況じゃないし、ひとまず俺の部屋かシズちゃんの部屋かに避難しないと。一日様子を見て戻らないようなら新羅にでも聞いてみた方が良いかもしれないな。

…この場合奴に解剖されるのは俺になるのか?


若干の恐怖と同時に俺は、ワクワクしている。
だってこれは、どう考えても面白い話でしかないじゃない?



「とりあえずお前、俺の顔でにやにやすんなよ」

げんなりした静ちゃんなんてもうどうでもいいってくらい、浮き足立った気分で俺は立ち上がった。おおお視界が高い…!


「ほらはやく立って立って!」
「あん?」
「新羅んとこいくよ!」



さてはて上機嫌な平和島静雄と不機嫌な折原臨也が一緒にお手手をつないで歩いてるとか、みんなが見たらどう思うだろう!
今日1日の楽しすぎる予定を立てながら、俺は本当、人生で一番じゃないかってくらいに満面の笑顔だった。




結局、これがまた1ヶ月以上続く異常事態のはじまりだった訳だけれど…それはまた、別の話。







/臨也さんは入れ代わっても楽しみそうだねって感じで…



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