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「それにしても、えらい目にあったな静緒。もう大丈夫なのか?」
「はい。すんませんトムさん…急に休んだりして」
「いや、つか俺も悪かったな。気付かなくて。恐かったべ?」
「はは、平和島静緒ですよ?あんな変態恐いわけないっすよ」


平和島静緒は、結局3日で回復した。
真新しいバーテン服に身を包んだ彼女は、もうすっかり笑顔を見せている。
あの変態が触ったかもしれない、ということで下着や服は全部処分したのだが、この服はその際弟に入れた詫びの電話を切ってから半日後に大量に送られてきたものだ。
曰く、姉さんにはそれが一番似合うよ、との事である。

下着類はどうも門田達――というか狩沢が用意したらしい。
なぜ静緒のサイズを正確に把握しているのか辺りが気になる所ではあるが、意外にも趣味にあったものが用意されていた。
――――臨也の。

どうも自分では買いにくいような下着類に目を白黒させながらも、静緒は素直に礼を言った。
人様の好意を無駄にしてはいけないのだ。しかも、金は要らないと言われてしまうと余計になにも言えない。
代金はちゃんともらってるから大丈夫だよ!と狩沢は言ったわけだが…この辺りがこの下着の趣味にからんでいるということだろう。それは静緒にもうっすらとわかっていた。



ふう、と静緒はため息を吐いた。
今日は仕事が終わり次第引っ越しだ。持っていく荷物は本当に最低限ではあるが疲れる事に変わりはないだろう。
それに、今度の家には同居人がいる。
ニヤニヤしながら静緒が来るのを待っているのだろうか。
恥ずかしい。
それから、同時に少しだけ、嬉しい。


なあ、あの変態に触られてた時、どんな夢みてたと思う?


今日の夜、言ってみよう。
どんな顔するだろう。驚くだろうか、喜ぶだろうか。嫌がられは、しないと思うけれど。
それから、もし、もしそんな空気になったら、狩沢が買ってきた下着、見るのだろうか、アイツが。
白昼堂々、そんな妄想をしていたものだから、静緒は気付かなかった。
自分に迫る影に。



「し、静緒おお!」

急に後ろから羽交い絞めにされる。
驚いて振り返ったのだろう、トムが静緒!と鋭く叫んだ。


「…ああ?」


気持ち悪い感触に、静緒の額に青筋が浮いた。
ガチガチと怒りに奥歯を震わせながら抱きついてきた男を引きはがす。
やはりというか、なんというか。全ての元凶がそこに居た。




「そうだった…そうだったそうだった…思い出したぜ。アンタにお礼すんの忘れてたなあ」
「俺のものにならないならしん…ひいい!!!」
「とりあえず、てめえが、一回、死んどけえっ!」


そのまま男の首根っこを掴み、静緒は右手を振りまわした。
男の身体が宙に浮き、ぶん、と音を立てて回転しそのまま空高く飛んでいく。
そうだ、変態に後れを取りはしたが静緒は池袋最強なのだ。負けるわけがない。
情けない悲鳴を上げて飛んでいく男に、ふん!と鼻息を漏らして静緒は手を払った。
ぱちぱちと拍手するトムに照れたように笑って、頭を掻く。



とりあえず帰ったら―――そこまで考えて自分に笑う。
帰ったら、だって。まだ住んでもいないのに。
そして待ち切れなかったのだろうか、前方からやってくる見慣れたジャケットを見つけてもう一度笑った。




ただいま、っていってやろう。話はそれからだ。








/おしまい!
長らくのお付き合いと応援、本当にありがとうございました^^^^^^
静緒さんと臨也さんに代わって佐藤がお礼をさせていただきます!みなさまおつかれさまでございました!



あきゅろす。
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