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雪の日









窓から外を見ると一面雪で覆われキラキラと光が眩しく反射していた。
真っ白に輝く雪の上を神楽と定春がはしゃいで走り回っている姿が目に入る。元気いっぱいの姿に思わず感心して微笑んだ。

「元気だなぁ神楽ちゃん」

神楽とは年が少ししか離れていないというのに、新八は半纏を着て小さく縮こまっている。そんな自分に苦笑して口元に手のひらを当て息を吐く。ひやりと冷えた指先をゆっくり暖めれば、神楽の声が響き渡った。慌てて視線を遣ると、背中を丸めて体を小さくした銀時が帰ってきたようだ。

珍しく入った依頼は銀時独りだけの仕事で。こんな寒い日に仕事なんかしたくないとごねた銀時に一喝すると渋々現場に向かったのだった。
寒い中働いてきた銀時の為に部屋の中を暖めて、お風呂を沸かし、善哉を作った。甘やかすつもりはないけれど、頑張ってきたご褒美にとつい体が動いてしまったのだ。

緩む頬を少しだけ引き締め、鍋の中の善哉を温めていると突然銀時の叫び声が上がった。響き渡る神楽のはしゃぐ声と銀時の悲鳴に笑ってガスコンロの火を消す。そして、玄関へと歩を進めるとバタバタと激しい足音が聞こえてきた。またお登勢に怒られるだろうか。そう思いながら溜め息を吐いて玄関の戸を開けた瞬間、銀時が慌てて逃げ込んできた。

「あ、アイツ…は!手加減ってモンをしらねぇのかよッ…!痛ェし冷てえェ!」
「わ、随分やられましたね」

どうやら神楽が銀時に向かって雪玉を投げたようだ。ブーツを乱雑に脱ぎ捨てる銀時はガタガタと震えて唇を紫に染めている。髪に積もった雪を振り払うと、触れた髪の毛がひやりと冷えていて新八は銀時と同じように震えた。

「銀さん、お風呂沸かしたんで入りませんか?」
「おおーそうする、…お前も入る?」
「な、」
「ひとりで入ってもあったまんねぇよ〜」
「ばばばバカなこと言わないでくださいよ…!神楽ちゃんに見られたらどうするんですか…。着替え用意してますからちゃんと着てきてくださいよ?ほら、早く行って!」

早口で捲し立て脱衣所へと銀時を押しやると、くく、と笑われてしまう。笑われたことに戸惑い銀時を見上げれば頭を撫でられた。

「神楽が今度お妙とお泊まり会するっつってたろ?そん時、入ろうな」

ポンポンと優しく撫でる手のひらに冷えていた体が次第に火照っていく。熱を増した頬に手を当て俯くと銀時が顔を覗き込みにやんと笑った。

「ゆでだこ」
「…っ、」
「かわ……ぶえックション!」
「ああ、もうほら風邪ひきますよ?早く入って」

顔を赤く染めた新八を茶化す銀時が盛大にくしゃみをしてぶるりと震える。風邪をひかれたら大変だ。早く早くと背中を押しやり、服を脱ぐ手伝いを行えば銀時の視線を感じ手を止めた。そっと銀時を見上げるとにやにやと笑みを浮かべている。その笑顔に瞬きを繰り返すと徐に抱き締められた。

「やっぱお前も脱げよ、手伝ってやっから」
「…え?」

はぁと息を吐く銀時に首を傾げた時、袴の上から太股を触られ肌が粟立つ。震える肌に銀時が甘く噛みつき、熱い舌で首筋を舐める。冷えた肌が銀時の舌で溶けていきそうだ。

「なぁお前があっためて…」
「ぎんさん、」

蕩ける思考の中で重なる肌が心地よくて瞼を閉じた瞬間、玄関の戸が開く音が響いた。

「うー寒いアル!銀ちゃーん新八ィー」
「!」

神楽の声が鼓膜を揺らし、慌てて銀時と顔を合わせる。靴を脱ぐ音が聞こえ急いで目配せをして服を着たままの銀時は浴室へ入り、新八は神楽を出迎えに向かった。

「神楽ちゃん、お帰り」
「ただいまネ!聞いてよ新八!銀ちゃんと雪合戦して勝ったアル!さすが神楽様強いネ!銀ちゃんはどこアルか?負けて今頃泣いて……ん?新八、顔」
「顔…?」

瞬きを繰り返し顔を覗き込む神楽にどこか可笑しなところがあるのかと焦り両手で顔を触る。まじまじと見つめる神楽の瞳に狼狽えると、にこりと微笑んだ。

「ゆでだこアル!新八あったかそうネ」
「え?…わっ神楽ちゃん!?」

突然抱き付いてきた神楽に驚いていると、浴室から銀時が姿を現したことに再び驚いた。二人に戸惑えば、銀時が抱き付く神楽の首根っこを掴んで引き剥がし浴室へと促す。

「神楽お前勝ったから先風呂入ってこい」
「いいアルか?」
「おぉ、ご褒美だ」
「キャッホーイ!」

嬉々として浴室へと向かった神楽の背中を眺めた後、ゆっくりと銀時を見上げた。かちりと視線が重なると、いやらしい笑みを浮かべる。

「んで、俺はお前にあっためて貰うわ」

そう呟いて抱き寄せる銀時の腕の力が心地良い。すぐに絆されてしまう自分に呆れながらも銀時の匂いに幸せを感じる。擦り寄る冷たい頬に新八の熱を滲ませ溶かしていく。耳元に唇を寄せて熱い息を吐く銀時が耳たぶを柔らかく甘噛みする。与えられる刺激に更に熱が上がり銀時の首元に顔を擦り寄せると、銀時が笑みを零した。

「やっぱ新八が一番あったけぇ」

温度が重なりあって寒さが吹き飛ぶそんな冬もたまにはいいものだ。そう思いながら頬笑み、銀時の背中に腕を回した。




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