サンシャインデイ (銀新←土) 燦々と輝く太陽の下、いつもの白衣を脱ぎ捨て黒のズボンを膝上まで捲る。そして、手にはホースとデッキブラシを装備して選び抜いた生徒たちの前に立つ。 新八、神楽、土方、沖田の四人は体操服にジャージといった汚れてもいい姿で訝しむ。しかし、四人よりもイライラと文句を垂らすのは銀八であって。仕方ない、と半ば呆れプール掃除を始めていた。 最初はぬるぬるとした水垢に騒いでいたが、次第に真剣に取り掛かる。銀八は未だに眉根を寄せ文句をぶつぶつと零し、面倒臭い仕事を引き受けてしまった事に後悔した。 はぁ、と重い溜め息を吐いたその時、後ろから楽しそうな声が響く。何事かと思い振り向くと、新八が尻餅を付いていた。 「新八ー大丈夫アルか?」 「だ、大丈夫…、」 「ったく、鈍くせぇなぁ。ほら、掴まれ」 手を差し出した土方にはにかんだ笑みを浮かべ、その手を握った。そして、土方に支えられながら立ち上がり、しがみ付く。その光景に思わず舌打ちをした瞬間、後頭部を狙い撃ちされてしまった。 「つっ、めてェ!誰だこのやろォォ!」 「先生の頭を冷やしてやったんでさァ」 「…沖田テメェ、」 濡れた髪をぐしゃぐしゃと掻き、睨みを入れるとにやんといやらしい笑みを向けてきた。 「土方のヤローを狙いやしょうか?」 「あ、あぁ?」 くいっと顎で指した方を見れば、未だに寄り添っている。その様子にひくりと口端が上がった。 「頼むわ」 「ラジャー」 忍び足でホースを後ろ手に持ち、沖田は銀八の側から離れていく。 苛立ちを解消したいため煙草に手を伸ばしたが、先程の水攻撃によりおじゃんになっていた。ちっと再び舌打ちをした時、叫び声が響き顔を上げる。 「総悟!」 「何するネ!」 「ありゃりゃ、間違えたでさァ」 てへっとベロを出し、謝る沖田に銀八は眉間に皺を寄せる。 沖田が狙ったのは、目的の土方ではなく新八だ。何がしたいのか、溜め息を吐きながら騒がしい固まりに近付いた。 「なぁにやってんだよお前ら」 「先生ぇ」 「銀ちゃん、新八ビショビショネ」 新八を見遣れば白い体操服が濡れて肌が透けていた。何とも眩しい姿に鼻の奥がツンと刺激され鼻血が出そうだ。思わず鼻を手で押さえてまじまじと眺めると、視線が重なった。しかし、素早く視線を逸らされ恥ずかしそうに俯く。その羞恥に染まる表情がまた銀八を煽る。 暫し見惚れていると、沖田に手招きされ耳を貸した。 「堪んねぇですかィ?」 「…ったく、お前は何企んでやがんだよ」 「アレ?俺は素直に先生を喜ばせようと思って。企んでるように見えましたかィ?んーおかしいな。…そうですねェ、じゃあ今度の期末のヒントでいいでさァ」 「何が、じゃあだよ。最初からそれが狙いなんだろお前は」 にやんと笑う沖田に頭を抱え、承諾した。ヒントでいいなんて可愛いものだ。溜め息を零し項垂れると、機嫌良く笑う沖田が次のターゲットを決めたようだ。察知した土方と神楽が騒ぎながら沖田から離れていく。そして、二人を追うように走り出した。はしゃぐ三人を眺めながら隣に佇む新八を見るとくすくすと笑う。 「もう掃除どころじゃねぇな。志村、先に着替えてこい」 「え、でも」 「いいから、…今の志村まじエロいから」 「は…?」 「だから着替えてこい」 ぺたりと肌に張り付く体操服が、体のラインを際立たせる。刺激が強くて素直な体が疼いてしまう。舐めるように見ていると軽蔑した視線が突き刺さった。 「…変態だ」 照れたように頬を膨らませる新八が可愛くて眉尻が下がる。膨らんだ頬をぎゅむと片手で挟み、空気を抜くと茶色の瞳が揺らいだ。 「お前だけにな、」 低く耳元で囁き、にやんと笑んだ瞬間、再び後頭部を狙われてしまった。もう濡れても構わないが、新八との時間を奪われひくりと頬が引きつる。うんざりと振り向けば、びしょ濡れな土方がホースを持って怪訝そうな表情で立ち眺めていた。 「せんせー、ウザいんで消えてください」 「あァ?」 「にやけた面どうにかしてくださいよ」 「上等だコノヤロー!かかってこい!」 デッキブラシを持ち直して構え、摺り足をする。土方もホースを投げ捨て、デッキブラシを持ち同じように構えた。 じりじりと照らし続ける太陽の光が眩しく目を細める。男らしく此処は勝負をしようじゃないか。 |