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108chuuu









大晦日。年の暮れに銀時神楽定春が恒道館、つまり新八の家に泊まりにきていた。
タダで泊まらせるわけにはいかない、と妙にビシバシと扱き使われ銀時は大掃除に精を出す。神楽は妙に尊敬の眼差しを向け、銀時に声援を上げ楽しんだ。新八は晩御飯と年越し蕎麦の用意で追われていた。
笑い声やら厳しい声やら色んな声音が賑やかに響き、新年に向けて皆が協力した。そして、あっという間に時間は過ぎ新八お手製の料理を食べ終わったのだった。



一人台所で食器の片付けをしていると、微かに楽しそうな声が聞こえてくる。新八以外の三人と一匹がダラダラとこたつに潜り恒例の歌合戦を観ているのだ。聞こえてくる神楽の歌声にくすりと笑んで先程観たお通の曲を口ずさむ。

「今年も可愛かったなぁお通ちゃん」

ほぅ、と幸せに浸り泡の付いた茶碗を水で洗い流す。お通を思い頬を緩めると、ふいに感じた気配に新八は振り向く。すると、いつの間にか背後に銀時が現れていた。

「あれ、銀さんどうかしましたか?」
「あぁー、蜜柑を取ってこいって言われてよぉ」
「え、もう無くなっちゃったんですか?」

テーブルの上に置いていた山盛り蜜柑がどうやら無くなったようだ。早いなぁ、と苦笑していると静かに近寄り背後からぎゅうと抱き竦められた。突然の抱擁に驚きつつも呆れ、ゆっくり微笑む。近くに神楽や妙がいる事を気にしてないのだろうか。

「大掃除、お疲れさまでした」
「あぁーまじ疲れたわ」

癒やして、とぐりぐり頭を擦り付けてくる。擽ったくて身を捩るが更に密着する銀時の温もりが気持ちいい。
新八は水道の蛇口を閉め、濡れた手を割烹着で拭いた。そして、銀時の腕の中でぐるりと回り向かい合い背中に手を回す。

「銀さん」
「んー」
「今年も、お世話になりました」
「あ、いやー此方こそ」
「来年もお世話、してあげますよ」

くすくす笑って伝えれば銀時は眉尻を下げて笑った。

「おぉ、よろしく頼むわ」

額に柔らかく口付けられ、新八は頬が緩む。抵抗せず受け入れると、唇に触れて直ぐに離れていった。なんだか足りないキスに銀時を見つめる。そんな気持ちを察知したのか銀時がくしゃりと笑った。

「なぁ、除夜の鐘って百八つ鳴るんだよな」
「そう、ですけど…どうしたんですか?」
「挑戦しようぜ」

にたりと悪戯な表情に変わった銀時に嫌な予感が走り新八は背中に回していた手を離す。じり、と退こうとしたが遅かったようだ。
獣のように唇を奪われてしまい新八は目を見開いた。しかし、直ぐに離れていく。

「ぎん、さん?」

不思議に思い名前を呼ぶと、また唇が重なる。銀時の行動についていけない新八はされるがままに身を預けた。熱の点った唇がくっついては離れてまた重なる。その繰り返しに新八はふわふわと心地いい目眩が起こっていた。

「ん、んう…」

けれど、息継ぎが下手な為徐々に苦しくなっていく。広い背中を力の入らない手で叩くが未だに離れてくれない。堪らず新八は熱い唇から逃れるように顔を逸らした。

「新八、まだ」
「…な、なんなんですか?」
「煩悩を無くす為に百八回ちゅーすんだよ」
「そ、それは除夜の鐘でしょ!」

一体何を考えているのだろうか。既に煩悩まみれな銀時の頭に呆れて溜め息を吐くと、顔が近付いた。一点を伏し目がちに見つめ舌舐めずりをする銀時に慌てて制止を入れる。

「ほら、逃げんな」

色が増した瞳に見つめられ新八はゴクリと喉を鳴らした。一度言い出すと梃子でも動かない銀時だ。仕方ない、と半分呆れながらも覚悟した新八は大人しく瞼を閉じる。

「や、やさしくお願いします、」

視界が途絶えたことによりあちこちからたくさんの音が敏感に体の中に染み込んでいく。
くすりと笑う声と唇を交わす濡れた音。
そして、遠くで鐘の音が厳かに鳴り響いた。




090101
happy new year:)






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