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彼の事情






買い物から帰ってきて唖然とする。
テレビの前に座る銀髪頭。ヘッドフォンを付けなにやら真剣に観ていると思えば。
こんな昼間からAVかよ。
新八の帰りに気付かない銀時は画面の中の行為に釘付けだ。新八はいつも以上に気配を消し銀時に近づいた。そして、ヘッドフォンを勢いよく取り上げた。


「ギャワァァアッ!……あ、し新八、おおおかえりぃ」

叫んだ後青ざめた銀時が不気味な笑みをみせた。そして、そろりと動き体でテレビを隠す。

「こんな昼間っから何みてんですか!帰ってきたのが神楽ちゃんじゃなくて僕でよかったですよ!」
「長谷川さんが持ってきたんだよ。だからぁ〜仕方なく、ほら、付き合いっつーのがあるからさぁ?それと神楽ならよっちゃんたちと遊ぶってさっき出てったんだよ、」
「まったく、信じられない」
「…新八、」

そっと伸ばしてきた右手を振り解く。
画面がちらりと見え、また唖然とした。新八も健康な男子なためこのようなピンクめいた映像には興味がある。けれど、それ以上に苛立ちが大きかった。

「早くテレビ消してください…って、あれ?…この人、僕に似てませんか?」

画面の中では、眼鏡をかけている三つ編みの女性が肌を露わにしていた。その女性が新八に少しばかり似ているのだ。

「っ!いやいや似てねぇって!新ちゃんの方が断然かわいいって!」

慌ててビデオを止め、テレビの電源を切った。
顔を左右に振る銀時に冷めた視線を向ける。

「………、銀さん」
「は、ははい?」
「あんたサイテーだ」
「新八、落ち着こう。な?!」

がしりと肩を捕まれ制止させられる。銀時の力強い指が皮膚に埋まる。落ち着こうと言った本人が一番落ち着いていない。


「……僕じゃ満足してないってことですよね」

そう口に出すと悲しくなってきた。
あんなに愛し合ってきたのに。銀時には足りなかったのだろうか。だから、こんなビデオを観ているんだ。
俯くと銀時が顔を覗き込んできた。必死な顔。自然と涙が浮かんできた新八はぐっと目を瞑った。

「おい、」
「もう知りません!あんたなんか一生エロビで満足してください!」
「新八!」

突然、ぎゅううっと銀時に抱きしめられ驚き目を見開く。熱い体。銀時の腕に押しつぶされるんじゃないだろうか。眼鏡が顔に当たって痛い。

「は、なしてくださいっ…、」

自分勝手な行動に銀時の背中を叩くと、力を抜いて優しく抱きしめてきた。

「新八、聞いて」

甘い声が上から降ってきてどきりとする。
惑わされちゃダメだ。耳を塞ぎたいが、銀時に甘い新八はおとなしく耳を傾けた。

「新八に似てる女優がいるって長谷川さんが持ってきたんだよ」
「…、」
「ちょっと興味持ってさ、試しに観てみたら全然似てねぇの。うちの新八はもっと可愛いし何回エッチしても初々しいし、むぐうっ」
「恥ずかしいこと言わないでください…!もーやだ!」

新八は耳を塞がず銀時の口を塞いだ。顔が熱くて銀時を直視できない。たぶん、むかつくくらいにやにや緩んだ笑みを見せているのだろう。
すると、突然手のひらを熱い舌で舐められ体が揺れた。慌てて口から離した時、またぎゅうっと抱きしめられる。

「お前一筋になってから長谷川さんにはこういうの全部断ってたんだけどな、失態見せちまったなぁ」
「銀さん、」
「俺はお前じゃなきゃ満足できねぇよ」

むかつくほどの笑みと言葉に新八は体を熱くさせた。
苛立っていた事がバカみたいだ。はぁ、と溜め息を吐き、新八は頬を緩めた。

「銀さんはバカだ…」







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