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うつらうつらと船を漕ぐ中、玄関の戸が開く音が聞こえた。
ゆったりと瞼を上げ、廊下へと目を向けると影がゆらりと揺れる。そして、障子が開いたその先に現れた新八の姿に銀時は頬を緩めた。

「銀さん、おはようございます」
「おぉー」
「あれ?神楽ちゃんは?」
「遊び行った」

欠伸をしながら、のっそりとソファから立ち上がり新八の前に立つ。不思議に思ったのか小さく首を傾げた新八は鼻の頭と頬が赤く染まっている。その頬に手を当てると、ひんやりと冷えていた。

「冷えてんな」
「外寒かったから、」

さらりと冷えた頬に温もりを分けるように撫でれば、大きな瞳が銀時を貫いた。

「…銀さんが熱くしてやるけど?」

にやにやと頬を緩めて囁く。すると、新八は眉間に皺を寄せ困惑した表情を浮かべた。

「遠慮します」

なんて、つれない返事。項垂れて溜め息を吐いた瞬間、手に新八の冷えた手のひらが重なった。慌てて新八に向き直ると困ったように笑っている。指先までこんなに冷えているではないか。

「やっぱ熱くしてやるって」
「…」
「いやいや、やらしい意味じゃなくてだな、」
「遠慮します」
「だから、」

暫し押し問答を繰り返してみる。しかし、頑固に遠慮するばかりで。そんな新八を見つめれば、微かに瞳に熱を帯びている。言葉では遠慮しても、心は違うのだろうか。

「遠慮します」

何度も聞いた言葉に、むっとして新八を抱き寄せ首筋に鼻先を埋める。深く吸うと肺に広がる新八の匂いに酔ってしまいそうだ。突然のことに新八は驚き抵抗するが、逃がさないように抱き締める。すると、諦めたのか新八の腕がゆるりと背中に回り、銀時は口端を上げた。

「遠慮すんじゃなかったのかよ」

耳元で茶化すように囁くと腕の中の新八が小さく震えた。温もりを求めてくるかのように体を寄せる新八が愛しくて可愛くて。

「銀さんがうるさいから仕方なく」
「素直じゃねぇなあ、」

笑って言えば、うるさいなぁと怒られた。視線が絡んで引き寄せられるよう口付けを交わす。触れた唇から熱が溢れていき、くらりと目眩がした。





あきゅろす。
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