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夜風がふわりと優しく髪を靡かせた。
乱れた前髪を整えるように指で梳きながら、前を歩く銀さんを見て歩く。

僕は、銀さんの背中を見て歩くことが好きだ。
歩いていて距離が開く事があるが、その時は必ず銀さんは立ち止まり空を見上げる。そんな銀さんを追うように近付けば再び歩きだす。たまに歩くのが遅いと文句を言うが、僕のことを考えて歩いてくれているのだろう。

今も前を歩いていた銀さんとまた距離が開くと、ぴたりと立ち止まった。少し遠ざかった背中を追うように速度を上げた途端、くるりとこちらを振り向いた。そして、頭を掻いて溜め息を吐いたようだ。なんとなくその態度にむっとすると、銀さんが僕の方に歩き出した。歩幅が大きい銀さんはあっという間に僕に近づいて。

「おせぇーよ」

小さく文句を言って手を差し伸べた。突然のことに理解が出来ず首を傾げると、乱暴に僕の手を取り歩き出した。

「ちょっ銀さん、」
「歩くのおせぇーから」

引っ張られるように歩いていたが、徐々に速度をさげて僕に合わせてくれる。繋いだ手はそのままで、恥ずかしくて銀さんを見上げれば照れたように微笑んだ。

「たまには、並んで歩くのもいいだろ?」

小さく拗ねたように言う銀さんが愛しくて手に力を入れる。それに応えてくれるように銀さんも力を入れた。伝わる温度が気持ちよくて幸せを感じ、頬が緩んでしまった。




あきゅろす。
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