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学校から帰ってきた俺は、鞄を置くと着替えもせずに冷蔵庫へ向かった。

「冬真、先に着替えろ」

シュルリとネクタイを緩めながら秀護が声をかけてくる。

「うん、後でー…」

えーっと…あったあった!

喜び勇んで目的のものを取り出す。

目的のもの、とは生クリームたっぷりのショートケーキ。
真っ赤ないちごは大振りで2つ乗っており、見るからに美味しそうだ。

ウキウキとケーキの乗った皿を手にリビングへ向かう。

「ケーキっケーキっ」

「ホント好きだな」

呆れ気味に笑う秀護の姿は、すでにネクタイを取り去りワイシャツの釦を全て外していて、前が大きく開いていた。

「着替えんなら部屋行けよ」

「別にいいだろ」

しかし、ここで秀護に気を取られていたせいで、足下が疎かになってしまっていて。

「っわ!」

「!おい…」


ベチャ


「‥‥‥‥‥」

「‥‥‥‥‥」

続いてぼたぼたとフローリングの床に落ちる音。

「……冬真」

「…すいません…」

なんでもない所につまづいた俺は、足を踏ん張って転ばずにすんだ。
すんだが。

手に持ったケーキは無事ではすまなかった。

反動でケーキが皿を滑り、前に飛ばされたのだ。
そのケーキが秀護の胸元にぶち当たり生クリームがべっとりと白く汚し、いちごやスポンジは床に落ちた。

「えと…ワイシャツが汚れなくてよかったな!」

わざと明るく言ってみる。

幸か不幸かケーキがダイブしたのは素肌の胸。

生クリームが腹まで垂れてしまっている。

「冬真」

「う"…ごめんなさい…」

「気をつけろ。転ばなかったからよかったものを」

くしゃりと頭を撫でられる。

ケーキぶつけた事怒ってるわけじゃないのか?

目を瞬かせて見上げていると、乱暴に頭を撫でられた。

「わかってんのか?」

「わ、わかった!ごめんっ」

「ったく」

俺の頭から手を離し、パサリとワイシャツを脱いだ。
そこで、はっとする。

「タ、タオル!いや、直接洗った方が…」

慌てて踵を返そうとするが、腕を掴まれて阻まれてしまう。

「まぁ待て」

「なに?!早く拭かないと…」

「あー、いい。いらね」

「は?」

何で?あ、そのまま風呂行って洗うのか?

怪訝な顔して首を傾げると、おもむろに引き寄せられた。

「舐めて」

「…は?」

なんですと?

さっぱり意味がわからなくて、ぽかんとなる。

「ケーキ、食いたかったんだろ?本体は落ちて食えねぇけど、コレならまだ食える」

『コレ』と自らの胸を示す。

確かに食いたかった。
ホールでは売らず、1日限定30個というレア。

スポンジはしっとりふわふわで、いちごは甘く、生クリームは甘すぎず重くない、らしい。

コクリと喉を鳴らすと、秀護がニヤリと笑った。

「ほら」

くいっと更に引き寄せられる。

俺の目の高さにある秀護の胸。

バクバクと心臓が暴れ、コクリと唾を飲んだ。
頬が熱い。

目の前でトロリと生クリームが垂れていく。
それを見て、咄嗟に唇を寄せた。
ぺろりと舌で掬い取る。

「ん…」

舌を口へ戻し、コクリと飲み込む。

すげぇ、うま…

再び唇を寄せ、ぺろぺろと犬のように舐め取る。

夢中になって舌を這わせていると、いつの間にか秀護の手は俺の背と頭に添えられていた。

「んく…ふ、んむ…ぅ、ん」

「可愛い…」

「?」

秀護の声がよく聞き取れなくて、上目遣いで見上げる。

頭から手が離れ、口元を拭われた。

「これも」

生クリームのついた指を口元に寄せられ、反射的に口を開く。舌を出してその指を舐めると、頭上で笑う気配がした。

「…ンだよ」

ジロリと睨みあげる。

「可愛いなぁって」

すっと細められた瞳に見入っていると。

「んぅっ」

頬に手を添えられ、塞がれる唇。

俺は見逃していたのだ。その瞳に宿っていた欲望に




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