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大人日乱
大人日乱ver.3


しかもどうしたことか、あのひとの勝手な『作り話』である筈のその言葉に、何故かあたしはデジャヴを感じている。
てゆーか、ものすごーく記憶にある。
(……あれえ?)
いやいやちょっと待ってよ、これっていったいどういうこと?!
だって『夢』なのよね、夕べのアレって。
あたしの見た『夢』で間違いないのよね?
なのになんでこのひと知ってんのよ。
そんな思いっきりあり得そうな痛いオチまで、何でこのひとが知ってるってのよ!
てゆーか、そもそも何でそんな戯れ言を『記憶にある』とか思っちゃってんのよ、あたし!と思ってサアッと青ざめた。



いやいや、本気でちょっと待ってちょうだい。
(…夢?)
や、それ以外にあり得ないんだけど。
(だって目覚めたのって自分の布団の中なんだし)
それにしたって昨夜のアレって、いったいどこからが『夢』で、どこまでが『現実』?
ぐるぐると回らない頭で昨夜の己の覚束ないまでの記憶を辿る。
ああ、そうよ。
昨日はたいちょと一緒にご飯を食べに行ったのよ。
それもちょっと小洒落た料亭の個室で、それが何ともあたしは不思議だった。
…今日って何かあったかしら??
そんなことを思って頭を捻ったことを憶えている。
だって普段一緒にご飯を食べに行くところなんて、せいぜいがそこらの居酒屋だったり量の多さが売りの安食堂だったりで、まあ…良くてちょっと小奇麗な小料理屋とか?
だからこんな高そうなところに入るのなんて、それこそ年に1、2度あるかないか…例えばあたしの誕生日のお祝いに・とか、クリスマスだからってあたしが駄々こねて強請って無理矢理連れてきて貰ったりだとか、そんな時ぐらいのモンなのよ。
なのに、昨日に限って「飯、食いに行くか?」って夕ご飯に誘われて、わーい!ってはしゃいで付いて行ったまでは良かったけれど、着いた先がいつもご飯を食べに行く隊舎近くの食堂でもなく居酒屋でもなく、それこそ接待か何かで使うような、ちょっと敷居の高い料亭だったことに内心あたしは驚いたのだ。
(そして突然のことに、正直…ちょっとだけ腰が引けかけた)
「ええっと、ここって割り勘のおつもりじゃないですよねえ?」
「ンなワケあるか、ド阿呆が」
とりあえずそれだけ確かめて、ホッと胸を撫で下ろしたのは言うまでも無い。
だけどあのひとは何も言わない。
それ以上、何の説明ひとつない。
ただ黙々と箸を動かし、お酒を重ねるばかりだったから、…仕方ない。
あたしも大人しくご相伴に預かることに決めたのだ。
そうしてテーブルの上の料理が粗方片付けられた頃、徐に抱き締められていたのだ。あたしは。
…あのひと、に。
(……って、)
「うえええええええ?!」
あれ?!あれ?!あれーーっ?!
ちょっと待って、ホント待って!
なんだ、これは。どうなってるんだ。
順を追って辿った記憶。
頭の中で反芻される昨夜の抱擁。
だけど記憶は更に混乱を来たすばかりで、あたしは更にパニックになった。
わー、もうすみません!
何がなにやら…夢と現実がごっちゃごちゃに入り混じってるんですけども!正に、今!
だってアレは、今朝方あたしが見た『夢』の出来事じゃなかったの?
あたしのこと、きゅうって胸に抱き寄せて。
「好きだ」
って…言ってくれたあのひとは、あたしの見た夢。妄想。願望なんじゃあなかったのー?!







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あきゅろす。
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