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お恥ずかしながら。
息子(裏)






私はご主人様のモノ。
所有物。

ご主人様だけが、私の救いであり神である。

…ご主人様だけ。

つまりご主人様の息子なんていうのは、
あくまで、ご主人様と血の繋がっているだけの人間に過ぎない。

私はご主人様のモノ。
所有物。

決して、
息子のモノではない。



――――――――……


「ん…っ、ちとせ、」

「若(わか)…」

しゅるしゅるしゅる。

週に一度、夜、少し暗がりの彼の自室で。

私は当然のように若をお慰めしている。
彼のモノを手で扱きながら口に含む。裏側をつつと舐め上げる。


「ん…はぁっ、あっ」

「ご気分はよろしいですか?若」

チロチロと尖らせた舌先で若の性器の先端を舐めてやれば、彼が息を詰めた。
次から次へ溢れてくる先走りに嫌気が差す。


…まったく、何で私がご主人様でもない野郎のペニスなんざしゃぶらにゃならんのだ。ばかやろう。
こんな行為、好きでするわけがない。

何事にも理由はある。



……雲雀財閥、といえば、アナログからデジタルまで、というのがキャッチフレーズのIT企業だ。
パーソナルコンピュータだかオンラインショッピングだか分からんややこしい横文字の羅列で勢力を伸ばし始めた、大企業。

社長の名前は雲雀総吾。
私のご主人様。
奥様の名前は雲雀百合。
ご主人様の愛する方。

息子の名前は雲雀恭弥。
ご主人様でもご主人様の愛する方でもない、
単なる息子。

ご主人様はそれなりに息子に愛情を注いでいるようだし、奥様も大事にしていらっしゃる。

…だから、だから。
だからそれが、気に食わないんだよ。


「あぁ…っ、う、」

若(…と呼んでいるだけの生意気なガキ)が私の頭を押さえ込む。
限界が近いのか。
だからって頭を押さえないで欲しい。それこそ生意気にも若はご立派なものをお持ちだから、そんなのが喉の奧にまで進んでこられたらえずいてしまう。

生意気なガキ。(年はさほど変わらないけど。)
…私からご主人様もご主人様の愛する方も奪っていった、最悪の悪魔。


「ひッ…んぁ、あァッ」

…口内に苦ーいどろどろが吐き出されて、つい眉をしかめる。
潤んだ瞳に火照った頬が、本当にこの人が雲雀財閥の息子なのかと疑わせる。

切なげに寄せられた眉と上下する薄い胸板を労りの目で見つめながら、白濁を飲み下した。
一週間分…だから苦さなんてひとしおだ。
…いつまで経ったって慣れやしないこの味。


「お疲れ様でした。」

お決まりの台詞で行為を締めくくって、恭しく頭を下げる。

週に一度。
普通、この年頃の男の子ときたら週に6回…1日に1回してたっておかしくない行為。
それが彼は週1だもの。
若は普通の健全な男の子に比べてかなりストイックな体質らしいのだが。
(この前若が「ちとせにはあんまりそういうことしてほしくない…」だって!悪かったな下手くそで!)

「では、私はこれで失礼いたします。」

早く口がゆすぎたいんですねばねばして気持ち悪い。

口には出さなかったが心の中でそう毒付いて、ベッドから降りようと後ろに下がる。

下がろうとしたところで、腕を掴まれた。
待って、ってするみたいに。


「…どう、されました?」

内心では嗚呼また始まったよ、と思いながらも、一応は丁寧に対応する。
出来たメイドだ。


「ね…ぇ、ちとせ…」

物欲しそうな目で、じぃっと私を見つめる。
あえて何かを言うわけじゃなくて、目で訴えかけるような。

…奴は本能的に相手を煽る術を熟知しているのか。
口ではハッキリ言わないくせに、相手に全て責任を押しつけるなんて卑怯だ。


「…お具合が悪いのですか?」

私はとぼける。
ばかやろう。
誰が、若なんかと。
あり得ないだろうが。


「…ちとせ…、」

もごもごもごもご。

…あの、その、だから、えっと、僕と………。

断片的にしか単語が聞こえない。
言いたいことは分かる…、が、悪いが分かってやるつもりはない。

ハッキリ言えないと知っていて白を切る私は、彼よりよっぽど卑怯だ。


「…だって、…いいでしょ?ちとせ、」

何が、いいでしょ?だ。
よくねーよ。
ばかやろう。
ご主人様でもない野郎と寝るなんざ御免だね。


「…大丈夫ですよ若。すぐによく眠れるリキュール入りの紅茶をお持ちいたしますから。」

勝手に具合が悪いと決め付けて完結。
どうだっていいだろう。
どうせ彼は何も言えない。


「……あぁ、…そう。」

ほら。
分かってもらえなくて悔しいのか身体が物足りないのか、若がフイッと顔を背ける。
りんごみたいに頬が真っ赤なのだが。(もう無視していいですか?)

名残惜しげに掴まれていた腕を離される。
ばかみたいに熱かった彼の手がはがれて、メイド服の上からすぅっと涼しい風が通った。


「…ちとせ、」

また、私の名前で。
呼び捨て。
それはご主人様だけの特権なのに。(…あぁでもご主人様が彼の前でも私を名前で呼ぶから仕方ない…)


「何ですか?」

素っ気なく返した。
ベッドから距離をとって、安全を確保。
一応あれでも男だ。
いつ、衝動的な行動に出かねない。
…と、考えたのも束の間。


「ぉ、…おやすみ。」

小さく返された。

「…おやすみなさいませ」

予想を越えた言葉にしばし唖然として、
私、あなたに意地悪しちゃったのに、なんて罪悪感に駆られて。


今日はひとまず、彼がよく眠れるようにと紅茶を作りに部屋を出た。




…――

「……。」

僕が、息子だから…。

ちとせに嫌われてるのは知ってる。
嫌われてる理由も。

…でも、ただ。
君を見るたびに募るこの強い衝動がいつか爆発してしまわないようにと、僕はゆっくりと目を閉じた。




――――――――……



限界が近いことを、
僕は知っていた。




continue…

つづく…かな。
続きます。
本格裏いきます。
駄文ですが。

ではまた次回!

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