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年下やら年上やら
年下の僕は、年上の君と

"器用な僕が不器用な君に"






「う〜……あー…、んぇ」

「………。」


「ふ、…んー?あ、えっ」

「……ちょっと、」


「ん、何きょん…?」

「何してるの」


「お、さいほー…とやらをっ、イテッ」


ああっ指刺したぁっっ!


……放課後までの貴重な静寂の間が終わり、今日も彼女はやってきた。


いつもなら、「何してるのーきょん!」とか「かまってよぅ!」だとか言ってくる煩い彼女は。
今日に限って、変な奇声を発しながら針と糸とを手に持っていた。

今日に限って、というのはこういう、仕事もないし咬み殺せる群れもいないし、といった……つまり非常に退屈で暇な日に限って、ということだ。


大抵そういう暇な日は、彼女のことをイジメて遊ぶというのが僕のスケジュール。


例えば、紅茶にわざとタバスコを入れておくだとか、コップに瞬間接着剤を塗りたくっておくだとか……

とにかく彼女には、できるイタズラの数が計り知れないほどある。



だけど今日の彼女は、一心に針を布に突き刺し、彼女自身で入れた紅茶にすら口を付けてない。



僕は何もすることがなく、ただただ彼女を観察していた。
(本を読めばいいんだけど、今更他人事のような話、読んだってつまんないからね)



それにしても、彼女は一体なにを作ってるんだろう。


一見ライオンに見えるソレは、可哀相なほどに耳やらタテガミやらがゴワゴワとほつれている。
(僕じゃなかったらソレは、きっと誰にも巨神兵にしか見えない)


「それ、何作ってるの」


マスコット、という事だけはまだ分かるのだけど。
明確に、僕でさえ悩んでハッキリといえないようなモノを作っている君。


「え、と…よいしょっ……クマだよっ」


「…惨殺死体のかい?」


「ヒドッ!ちがうよ、ハートを持ったクマさんなのっ!」


そういってフンと偉そうにマスコット(かも不明なソレ)を見せてくれた。


…なるほど、ハートの赤が中央に付いているから、血に見えるんだ…。


その垂れかかったマスコットの目が、非常に残念そうで哀れだ。
僕に懐いてしまった鳥の事を思い出しながら、クマって草食じゃなかったよね…と考えてデスクを立つ。


「それ、貸して」

重厚感のある黒革のソファーに座る君に、僕も腰を下ろしながらマスコットに手を伸ばした。


「う、うん……」

びっくりしながらも、ちゃんとマスコットを渡す君。

それを受け取って、チクチクと針を通していく。


ちらり、と見えた彼女の手に、あぁすごく頑張ったんだねと労りの気持ちすら芽生える。
絆創膏だらけの、君の手。(どうして腕まで絆創膏だらけなのかは理解不能)


「…ん、できたかな」

自分でも少し驚くほど、僕は裁縫が上手かったようだ。
巨神兵はラブリーなハートのクマさんへと変貌を遂げ、見違えるほどに愛らしかった。

「きょん…すごい…」

未だにその呼び方をする君だけど、今日はなんだか機嫌がいいので何も言わない。

「どう?少しはやり方覚えたの?」


「…あ、いや…。    裁縫するきょんの横顔があまりにカッコよくて…」

「…………。」



どんな時だって、見てるのはあなただけ!




continue…

はい、えーと、何話目?
三話目くらいですかね。

なんかちょっとオトメンなきょん助でした(´Д`)


友達にも雲雀みたいな、普段は何もやってないくせに、いざやらせてみると一流にやりこなす男の子がいます。

ええ、家庭科の課題は彼が担当しています。おかげで技術面はオールAです(笑)

ありがとう大橋くん!

ではまた次回!

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あきゅろす。
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