年下やら年上やら
隣のおチビさん
"やきいもおチビさん"
―百歩譲って、
草壁の言う通りだとしたら…………―
(僕って危ない………)
も、もしもだよ
中３以上(まぁ僕はいつでも好きな学年だけど、実年齢で考えたとして、)の男が小６の女児に懸想してるなんて事が何らかの弾みで発覚したりなんかすれば……
「うわ〜！変態〜〜っ！」
――うﾞ…っ！
外から聞こえてきた女の会話に、僕の思考がぴったり当てはまる。
た…確かに。
変態だ……………。
拳をぎゅっと握り締める。
こんな事が表沙汰になった日には、世間様から変質者扱いされ後ろ指を指され………(そんな事した草食動物は片っ端から咬み殺すけど)
でも社会的糾弾は免れない………
―故ニ コレハ誰ニモ
知ラレテハナラナイ…―
だったら今後の方針として僕はどうしたらいいか？
手元の地域プリントを覗く。(これ掲示板に貼っておかなきゃ)
「子供は地域ぐるみで大切に守りましょう！お兄ちゃんお姉ちゃんはよく気を付けて、優しくしてあげましょう！」
―これだ…。
「親切で頼もしい隣の家のお兄ちゃん」………
その辺のポジションが一番常識的かつ楽で安全な…
――…そーだね。
それが一番常識的かつ楽で安全な
「逃げ道」だな。―――
――――――――……
「あ……けむり？」
学校が終わって帰宅して、私の家の垣根の向こう。
パチパチという音と共に、もうもうと煙が上がっていた。
ど、うしよ……
火事かな、でもママいないし……
とりあえず様子を…―
と思ったとき、不意に垣根が割れて、中から隣の人(あの…私の好きな人…)が顔を見せた。
「焼き芋焼いてるんだけど、一緒に食べない？」
高い背のお兄ちゃんに言われて、うぅ…ドキドキして顔が見れないよぅ……
とにかくお兄ちゃんに返事しなきゃ……
……えぇぇと………。
こんなチャンスまたと無いけど、どうしよ、恥ずかしい………
そんな風に一人、ウンウンと考えていればクスリ、と笑われて
「いいよ、一緒に食べよう」
「あ…、ハイ…」
何となしに食べることが決まってしまった。
―――――――……
…この時、雲雀くんは
世間一般の婦女子が、
くるくる動く つぶらな瞳をした小動物に対して
「可愛い〜〜〜！」
と歓声をあげる気持ちが一寸だけ分かったよーな気がした。
…例えばハムスターとか
コマネズミとかピグミー・マーモセットとかの類だな。―――――
「はい」
「あ、ありがとう…」
僕は田中さん(これも、つい先日知ったばかりの名前)に焼き芋を渡す。
「おいしい？」
「ん…、おいしい」
まくまくと美味しそうに焼き芋を頬張る田中さんに、
あー、なんだろう……
草壁が変なこと言うから、妙に意識しちゃうじゃないか。(草壁め、咬み殺す…)
頭の中で一人葛藤していたら、ふと田中さんの頬(というか彼女の場合は、ほっぺた、というのが正しいのかも……)にススが付いているのを発見。
「ほっぺたにススが付いてるよ」
「えっ」
途端に赤くなる頬。(この年頃はこれくらいで恥ずかしいものなの？)
「そっちじゃない。反対側だよ」
「…んー」
「いやもっと上」
「うぅ…」
「あー、もうそこじゃなくて……っ」
何度言ってもちゃんと取れないススに僕は痺れを切らし、
「ここだってば…っ」
自分の親指で以てして、彼女のほっぺたをごしごしとしてしまった。
(…あ、)
「とれ、た？」
「…とれた」
素早く引っ込める手。
「ありがとぅ…」
田中さんはほにゃりと笑った。
(い…今のは間違い。)
彼女のほっぺを僕が………………………………。
無かった事に
無かった事に………。
でもあのほっぺたの感触がなんとも手に残る。
(余計な事を考えちゃだめだ。何か他の事を……)
―「ぷにぷに スベスベ
やわやわ ホッペ
ステッペ ジャンペ
〇×☆………」―
――雲雀くんの頭の中で、おかしな呪文がグルグルグルグル……―――
―とりあえず雲雀くんは、
(θを媒介変数とする方程式 χ=cos4θ,у=sin4θが表す曲線とχ軸,у軸で囲まれた図形の面積は…)
媒介変数表示の曲線に於ける面積を求めてみた。―
――――――――……
隣の子と、焼き芋。
continue…
はい、できましたね。
そういえば気付いている方もいらっしゃると思いますが………
文章最後の一行、
あのcontinue…の四行くらい前の文。
だんだんと、呼び方が変わってるんですよ。
隣の人から、今回の隣の子みたいにね。
まぁそういうところも楽しみにしていただければ幸いです(´∀｀）
ではまた次回！
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