「越前――…」
「…ぇ……」
手塚の言葉が聞こえた瞬間、リョーマは温かいモノに身を包まれた
何を為れたかなんていきなりすぎてわからず、頭も現状に追いついていなく目を見開いて驚く事しか出来なかった。
しかし次第に働きだす頭、自分の体を包んでいる腕が目に入った途端に何を為れたかなんて嫌でもわかってしまった。
「ぶちょ……何の真似ですか?」
リョーマがそう呟くものの手塚は一向に放してくれる気配はなく、寧ろ力を込める一方
流石にリョーマの小さな身体はその力強さには敵わなく一つため息をついて抵抗をするのを止めた
─ あったかい…
大人しくしていれば手塚の体温が触れているところから伝わり身体が熱くなる
こうやって抱きしめられるなんてどれくらい振りだろうか?
リョーマはフと思った
桃城とは抱き合った事はある…が、数回程度だし
ましてや今は喧嘩中、酷ければもう別れているんじゃないか?な状況
人の温もりをこうやって感じるのは本当に久方振りだった
「越前」
手塚に呼ばれリョーマ脳裏は手塚の腕の温かみから自分が夏の屋上で手塚に抱きしめられているというなんとも言い難い状況化にいるという事を思い出した。
リョーマが小さく返答すれば手塚はやっとこさ腕の中にいる小さな存在を解放し、肩を掴み自分の方を向くようぐいっと回した
そうすればリョーマからは うわっ と小さな叫びが聞こえてくる
その叫びの直後リョーマの視界に入ったのは目の前にある手塚の瞳
急な出来事の連続にリョーマも驚き思わず胸が高鳴った
「越前は一人でなんでも抱え込みすぎだ
何か辛い事があれば頼っていいんだぞ?俺だって相談にいつだってのる。
俺では役不足なら不二や大石、菊丸や河村だって、他にも色々な奴らがいるんだ」
「……」
「越前はもっと俺達を信頼しろ
仮にも仲間なんだからな」
手塚はそれだけいうとリョーマの肩から手を外し屈めていた膝を伸ばした
けれどリョーマは只々突っ立っているだけで動こうとはしなく、先程まであんなに嫌がっていたのが嘘の様にボーッとしていて
その顔を覗けば顔を林檎の様に紅く染めていた
─ 何部長にトキメいてるんだろ…
頭では冷静でいられるのに……いや、冷静をよそえるのに実際はそんな簡単にいかなく
目を反らし俯くだけだっ
た
それから暫くすると授業終了のチャイムが響く
あのあとリョーマが落ち着くまで会話は一切なく落ち着いた後はその沈黙が嘘の様にテニスの話で盛り上がった
本当に久方振りと思える程の心が安らぐ一時だったとも思えた
屋上を後にするときリョーマは手塚に一言残していた
その台詞は手塚の心をも微笑ましくなるもので
いつも堅く張り詰めている顔を少しだけ和らげた
『俺、良い仲間を持ったみたいッスね
ちょっとお節介だけど』
普段そんなことをなかなか言わないリョーマがこんなことを言うということはそれ程まで青学は、自分達は大きな存在になっているんだと容易に理解できた
最後の台詞は只の照れ隠しなんだと手塚ですらも理解でき、それがまたほほえましさを倍増させた。
リョーマの背が見えなくなると手塚も次の授業に遅れぬよう屋上を後にした
後書き
久々の更新がいつも以上にグダグダですいません
いつか書き直します
08/03/07
[*前へ][次へ#]
[戻る]