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ファンタの味
第14話









「越前――…」


目の前に現れたリョーマに桃城は呟く用に声を漏らした
その瞳にはもうリョーマしかうつっていなく、手塚はそのまま屋上からさっていった



二人きりの静かな時間――



いったいどれくらい振りだろうか
ここ最近は二人きりになればなんやかんやと色々な事が起こり、こうやって静かに過ごすのは本当に久方振りだった

だからだろう

何を話せばいいのかわからないのは…
けれど桃城にも…そしてリョーマにも互いに聞きたい事はある
だから……


「越前…」


― お前は…お前はまだ


「俺の事好きか?」


リョーマの気持ちを確かめなくてはいけない…


― まだ、お前は俺を愛してくれるのか?





桃城の中のリョーマは……越前リョーマという1人の人間の存在は確実にあの頃よりも高まっていて

だからこそ大切にしたくて
リョーマの気持ち-オモイ-を最優先させたくて…

真っ先にリョーマの気持ち-オモイ-を聞いたのかもしれない


けれど…


けれどもしリョーマがここで首を横に振れば…?


ありえなくもないもう一つの運命に桃城は少し怯えた
けどこれは自分が生んだ事により生まれた産物だから…受け入れるしかない


そう心の奥底で決心を固める

瞳にはやはりまだ見ぬ未来-サキ-を写していて、それと同時に目の前にいる少年を見構えていた



少年-越前リョーマ-はそれでもなお俯いていた
桃城の心情-オモイ-の変化には気付かぬように…ずっと

本当は心情-オモイ-の変化に気付いているのに…何故俯く?


桃城に対しての想いを本当に断ち切ったから?

ただ、アノ桃城を思い出してしまうから?


― 違う


― 俺は…


― 俺はただ……










― あんなに想いを断ち切ろうと想ったのにその時にも増して膨らんでいたこの気持ち-オモイ-が恐いだけ…










嫌いたかった


なのに膨らんでいくのは憎悪でも、ましてや憎しみでもない。人を愛す…愛情


桃城を愛す……愛情


だから、答なんか決まってる
ずっと、心は1つを選んでいた


― だからなんだろうね、さっきの台詞が…とても嬉しかったのは


「好きに…決まってんじゃん
ずっと………ずっとずっと…好きだったし、これからも好きだよ」


言い終えて初めて顔を上げる
その顔はとても優しく微笑んでいて、目尻にはうっすらと小さな涙が宿っていた

そして…





ギュッ





どちらともなく互いの背に腕をまわす


温かな体温が両者を更に温め、その体温がまた更に両者を温める


ただただ温まる体温

あの時に凍てついた気持ち-オモイ-も心情-オモイ-もゆっくりと溶け、そして動き出す





「桃先輩は…俺の事…………好き?」

「あぁ」

「そうじゃなくて…」


― 部長に言ったように、俺にも同じ事言ってよ


言わずとも伝わったリョーマの台詞
桃城は そうだな とボソリと呟き、そして


「越前の事を愛してる
あの時と変わらずに…
いや、あの時以上に越前の事を愛してる
部長と幸せになれ……おまえにはそう言ったけど……本心じゃねーよ」

「アリガト…」











俺達はずっとずっと擦れ違ってたよね





だから





もう幸せになっても…





桃先輩と幸せになってもいいんだよね――…?












08/05/11

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あきゅろす。
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