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ファンタの味
第13話






近づく影

段々と外の光りに慣れ影は人の形へと変化していった


「越前ッ!!」


その影がリョーマだと…
そう信じ尚もぼやけている影に向かって走る

そして視界に入ってきたのは自分が捜し、求めていた越前リョーマ――…









ではなく、男子テニス部の部長、手塚国光だった
手塚はいかにも桃城を待っていたのかのように話しを始める


「越前を捜しに来たのか?
悪いが今の桃城に越前を会わせる訳にはいかない」


桃城はただ目を見開き手塚を見つめていた

手塚はそれを知りながらも視線を合わせようとはせず、背を向けると空を見上げた


空は曇天

陽は出ていなく少々肌寒い

小さく身震いをすると自分しかわからないような小さなため息をつく


「桃城、お前は越前を突き放した……いや、捨てた
違うか?」


沈黙が流れる――
手塚は沈黙を肯定ととりただ口を開く


「越前は苦しんだ
お前に突き放され、それでも嫌いになれない自分に…
そして嫌いになろうとした」

「……」

「これで桃城も気が済んだだろう
これ異常越前に何か言う気なら俺が全力で阻止する」


再び流れる沈黙
桃城は何も言い返さないで……いや、言い返せないでいる


― 確かに俺は越前を苦しめた…


― けど…


「越前と話しがしたい
それで…出来る事ならやり直したいッス」

「越前はお前を嫌おうとしているのにか?」

「越前が俺の事を――」


本当に嫌いになったなら…

俺は大人しく身を引く

けれど……


可能性があるなら――


「まだ想ってくれてるなら…」


俺は越前をもう一度

愛したい――


「……そうか」


― 桃城はひたすらに越前に会いたがっている
けれどまだわからない……

もしここでリョーマに会わせて

また話しが拗れでもしたら…


そういう可能性が0ではないからこそ










会わせる訳にはいかない










「なら最後に1つ
お前は越前がまだ自分の事を好きならばやり直す……といったが、お前の気持ちはどうなんだ?」

「俺の…気持ち?」


― 俺は…越前の事を


「越前の事を愛してます
あの時と変わらずに…
いや、あの時以上に越前の事を愛してます
部長と幸せになれ……あいつにはそう言ったけど……本心ではありません」


迷い無く言葉を紡ぎだす桃城
その瞳はまだ見ぬ未来-サキ-を見ていて
過去に囚われ等はしていない…力強い瞳だった


― こいつらは本当に愛し合っているんだな…


リョーマを愛すあまりその態度を裏目にとってしまった桃城

桃城を愛すあまり自分の気持ちを抑えてしまおうとしたリョーマ


こんな自分の気持ちに不器用な2人でも、2人は2人なりに一生懸命恋愛をしている

そんなところに手塚は折れたのかもしれない…
そのまま屋上の出口まで向かうとトアノブに手をかけ忘れていたのかのように口を開く


「そろそろ出て来ていいんじゃないのか?」


手塚の意味不明な台詞にクエスチョンマークを浮かべる桃城

けれど場の時は確実に流れていて、桃城や手塚の位置からは陰になっていたところから人影が現れ出た。




――ドクン




その影は徐々に桃城のもとへと近寄ってくる
段々と鮮明に描き出されるその人物はまだはっきりとは目に見えてなく明確ではないけれど、桃城が捜し求めていた人物で、驚きと羞恥心からか鼓動がただただ高鳴り続けていた――…











08/05/05

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あきゅろす。
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