忘れ物
3.-2-
「なんであんたはいつもいつもそんなに無茶するわけ?!」
部屋の真ん中に仁王立ちしているのはブルマ。
やはり相当怒っているようだ。
そして彼女の前にある大きな白いソファに腰かけている男こそ、ブルマの夫、ベジータである。
逆立つ髪に鋭い目つき。
いつもポーカーフェイスを崩さない彼だが、さすがにこの時ばかりはイライラとした様子で言った。
「うるさいぞ。馬鹿みたいにギャーギャー騒ぎやがって…
大体、無茶をせん修行など修行にならん。」
もっともな意見。
これにはヤムチャも納得だ。
それにベジータの性格上、中途半端な事をするのはプライドが許さないのだろう。
だが、ブルマは全く怯まない。
「あたしが言ってるのはそういう事じゃないの!」
夫の左腕を指差して、続ける。
「それよそれ!そのケガ!
なんでほったらかしにするわけ?!血だっていっぱい出てたじゃないの!!消毒もしないで、膿んだりしたらどうするつもりよ!!!」
ケガ?
モニターすれすれまで顔を近づけてよく見ると、確かにベジータの腕には包帯が巻かれていた。
ヤムチャが察するに、ブルマがベジータのケガを手当てしてやった後、それぞれの意見の食い違いから言い争いになったらしかった。
「知るか。こんなケガ 放っておけばすぐ治る。もう黙れ」
「だから、そうしたらバイ菌とかが入って余計悪くなるかもしれないでしょ!
いくらサイヤ人だからっていっても――…」
「黙れと言ってるだろう!!」
びくっ と、ブルマの肩が震えた。
「くだらん事でいちいち騒ぎ立てるな!オレがどんな修行をしようと、どんなケガをしようとオレの勝手だ!!お前には関係無い!!」
そして一呼吸置いて、続けた。
「わかったら さっさと出て行け…!」
ブルマはうつむいたまま、何も言わない。
ベジータも、顔を背けてしまった。
うわ…ど、どうすんだよ…
最悪の空気じゃないか…
部屋の外で1人、ヤムチャは立ち往生するしかなかった。
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